Q 暑いのが苦手で、夏は食欲があまりわかず、毎年たいてい夏バテ気味になってしまいます。体質なので仕方がないかと思っていましたが、夏バテのための漢方処方があると聞きました。どんなものですか。 (42歳・女性)
A 体がだるい、手足がほてる、動作が鈍くなる、何をするにもおっくうになる、食欲がなくなる、やせてくるなど、夏バテは不快なものです。
昔の医師や薬店では、ビワの葉をせんじて、道行く人に自由に飲ませたそうです。これは「ビワ葉湯」といい、今でも民間療法として伝えられています。
漢方では、夏バテや夏やせのことを「注夏病」といいます。
また、夏の暑さに負けて、潜在的な病気が悪化することを「中暑」といいます。
江戸時代の大学者貝原益軒先生は、
「四時(四季)のうち、夏月もっとも保養すべし。霍乱(かくらん=暑気に当てられて起こる吐瀉病)中暑、傷食(急性胃腸カタル)瘧痢(ぎゃくり=発熱性下痢)の病おこしやすし。…夏月この病おこれば元気へりて、大いに労す」
と、その著「養生訓」で説き、さらに1年の中で養生しなくてはいけないのは夏だとして、加味生脈散(かみしょうみゃくさん)、補気湯(ほきとう)、清暑益気湯(せいしょえっきとう)などを体の状態に合わせて服用するようにと続けています。
最近では、清暑益気湯(せいしょえっきとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、六君子湯(りっくんしとう)などもよく使われます。
どの漢方薬が自分に当てはまるかは専門家でないと見極めが難しいもの。
専門家によく相談することが大切です。ちなみにこれらの漢方の一部を解説しておきましょう。
- 清暑益気湯(せいしょえっきとう)
一般的な夏バテの薬です。服用を始めてすぐにはあまりその効果を感じないのですが、1~2カ月飲み続けるうちに、弱った体力が回復していくのを実感できるでしょう。 - 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
江戸時代の津田玄仙という人は、「療治経験筆記」の中で、この薬を使うときの8種類の目安として
①手足の倦怠(けんたい) ②言語が軽微
③眼に力がない ④口の中に白沫(まつ)が出る
⑤食べ物の味を感じない ⑥暑いものを好む
⑦ヘソの辺りで動悸(き)がする ⑧脈が散大で力がない
を挙げています。これらのうち1つ2つの症状があれば、補中益気湯をということになります。 - 六君子湯(りっくんしとう)
胃腸の弱い人の薬です。中国の明の時代の医書「万病回春」には、虚弱体質の人やお年寄りで、胃腸が弱くて疲れやすく、食欲や食味がなくて下痢をしたり、貧血のある人によく合うとしています。
いずれにしても、あまり冷たいものを取りすぎたり、クーラーや扇風機で体を冷やしすぎないことが大切です。
夏の疲れを残さず、すがすがしい秋を迎えましょう。