Q 50歳代半ばからだんだんと膝(ひざ)が痛くなり、これまでいろいろな治療や薬を試しましたが、症状は悪化するばかりです。今では長く歩けないので、出掛けることがほとんどなくなりました。正座は全くできません。何か良い治療法を探しているのですが…。 (68歳・女性)
A 症状が進行すると、気分が滅入るものですね。階段や坂道の上り下りでの膝関節の痛みや、歩くと痛いとか、正座ができない、関節に水がたまるといった症状の多くは、「変形性膝関節症」によるものです。
40~50歳代にかけて表われることが多く、これまでの経験から申しますと、肥満傾向のある女性に多いようです。
最初のうちは少し養生するだけで比較的簡単に痛みは治まりますが、繰り返すうちにだんだんと治りにくくなります。
つい先日も、私どもの薬局に、50歳代のふくよかな女性がいらっしゃって、「6、7カ月前から膝がずきずきと痛み、朝起きたときには手足がこわばり、下半身がむくむ」とのことでした。
この方には、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)を服用してもらいました。
1カ月ほどして足の痛みと手足のむくみがほぼなくなり、さらに1カ月ほど服用すると薬を飲まなくても良くなりました。
この方のように軽症のうちは治りが早いことが多いのですが、ほとんどの方が何年間も悩まれてから漢方薬の相談に来られます。
ところが、こじれた症状でも漢方薬が思いのほか早く効果を表すことがあります。
防已黄耆湯は、中国の後漢の書「金匱要略(きんきようりゃく)」に記されていて、2000年以上前より利用されている薬だと思われます。
その歴史から考えて、効果と安全性の高さが分かるでしょう。
一般的には、色白、水太りで汗っかきの人に使うことが多く、上手に使えば1~2週間で膝の感じが変わってきます。
痛みが消えてしまうまでにはある程度の期間が必要ですが、痛み止めの薬も徐々に不要になっていきます。
そして、間食を控え、食事の内容を見直して、肥満を解消し、また筋肉を丈夫にしていくことができれば理想的ではないでしょうか。
ただし、変形性膝関節症で悩む人なら誰でも防已黄耆湯が合うわけではありません。
ほかにも、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)、桂芍知母湯(けいしゃくちもとう)、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)、大防風湯(だいぼうふうとう)など効果的な処方はいくつもあるからです。冷え、のぼせ、痛み方、肩凝り、便通、体格などさまざまな条件によってどの漢方を使うかを見極めます。
使い方を誤れば、効果が出ませんし、副作用の可能性もあります。信頼できる専門家に相談されることをお勧めします。