Q 長年、父が高血圧に悩み、降圧剤を飲んでいます。食事にも気を付けていますが、かんばしい結果は得られません。先日、親せきの方がやはり高血圧による脳梗塞(こうそく)で亡くなったことから、とても心配しています。漢方薬を試してみたら、と話しているのですが…。 (38歳・女性)
A 天高く、食欲が増す秋ですね。しかし、肥満、塩分の取りすぎは、血圧の上昇を招きます。お父さまの食生活に気をつけてあげたいですね。
現在日本には、高血圧症の人が約700万人、予備軍を含めると約1600万人いるといわれ、まさに国民病です。
遺伝要因と生活習慣が複雑に絡み合って発症すると考えられていますが、詳しくは分かっていません。また、あなたが危惧されている通り、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などさまざまな病気の引き金となります。
漢方にも高血圧の処方がたくさんありますが、よく使われるのが、「釣藤散(ちょうとうさん)」です。
これは、高血圧の人なら誰でも効くというわけではなく、皮膚が乾燥してツヤがない、のぼせがある、肩や首に筋肉の凝りがある、イライラがみられるなどの場合に適するものです。
釣藤散の処方は、中国・宋の時代の許叔微(きょしゅくび)という人が「普済本事方(ふさいほんじほう)」という古い書物に著しました。
釣藤、橘皮(きっぴ)、半夏(はんげ)、麦門冬(ばくもんとう)、茯苓(ぶくりょう)、人参(にんじん)、菊花(きくか)、防風(ぼうふう)、石膏(せっこう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)といった11種の薬草からできています。
釣藤は、リンコフィリンというアルカロイドを含んでいて、これには抹消血管拡張作用、鎮静鎮痙作用があります。
また、菊花は花びらを乾燥させて枕(まくら)に入れることで安眠効果をもたらすとされ、食用としても昔から多く用いられてきました。漢方では頭部の充血、うっ血などの症状に用いられています。
漢方薬を服用して、高血圧が短期で正常化するのはまれです。しかし次のようなケースもあります。
当薬局に高血圧症の75歳の男性が相談に来られ、上は165~180、下は100で血圧に不安を感じているとのことでした。
釣藤散を服用し始めて、約20日間で上は130~160、下は85~100になり、約1カ月後には125~135/80以下になりました。
以降14カ月間で、3カ月分の釣藤散を間欠的に服用していると、秋に再び150/100となり、釣藤散の服用を見直しました。
最終的に130台/80台に落ち着き、服用しなくても済むようになりました。
釣藤散は、長期に服用しても血圧が下がりすぎることはありません。
また動脈硬化予防にも適し、善玉コレステロールを増やし、中性脂肪を減らす作用もあります。
根気よく飲んでください。