Q 糖尿病のため、薬を飲み始めて3年になります。食事療法、運動療法などを心掛けていますが、なかなか実行できず良くなりません。友人から良いと聞いたので、漢方も試してみたいと思うのですが…。 (60歳・男性)
A ご存じのように、糖尿病はすい臓から分泌されるインシュリンという酵素が不足して血糖値が高くなり、尿に糖が下りる病気です。日本では患者が増える一方です。
糖尿病には大きく分けて2種類あり、多くの場合は遺伝的要素に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満、精神的ストレスなどの環境的な条件が加わって発病します。
もう一方は、ウイルスによるすい臓障害など、はっきりとした原因によって糖尿病が起こる場合で、血圧降下剤やステロイド剤による薬剤性糖尿病もこのタイプに入ります。
人間の体は、慢性的な高血糖の状態が続くと、さまざまな障害が現われます。
動脈硬化症、網膜症、腎症などの血管障害、下肢の疼痛(とうつう)やしびれ感、筋肉の力の低下、性欲減退などのさまざまな神経障害です。
さらに感染する病気にかかったり、消化器障害、皮膚疾患などの合併症、場合によっては死に至るケースもあります。
西洋医学的治療では、血圧降下剤により血糖値のコントロールが可能になり、糖尿病昏睡による死亡は激減しましたが、全身の調子を整えるのは難しい場合があります。
先日も当薬局に、69歳の男性の方が来られました。
「糖尿病のため、西洋薬で血糖値をコントロールしているが、気力がない。白内障の手術も勧められている」とのことでした。
そこで八味丸(はちみがん)という漢方薬の服用を続けたところ、体調が良くなったとのこと。このように西洋医学と漢方を併用すると良いことがあります。
八味丸は、地横(じおう)、山薬(さんやく)、山茱萸(さんしゅゆ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、桂枝(けいし)、附子(ぶし)という8種類の薬草を組み合わせたものです。
この八味丸は、主に腎虚といって、体が弱った状態で、下肢の痛みやしびれ感があって、下腹に力がない人や、のどが渇いて水を多く飲む人に使われます。
そのほかの糖尿病に使われる代表的な漢方薬としては、大柴胡湯(だいさいことう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、六味丸(ろくみがん)などがあります。
いずれも、病人の体質や症状に合わせて選びますが、単に血糖値を下げるだけを目的とはしていません。
全身症状の改善を目安に体質改善を図り、結果的に血糖値を安定させることになるのです。
しかし漢方薬を有効に利用するにしても、基本は食事療法です。過食を避け、適度な運動を続けるようにしてください。