寒くなると膀胱炎が心配です
Q 一昨年、昨年と続けて膀胱(ぼうこう)炎を患いました。朝晩冷え込む近ごろはトイレが近くなった気がして、今年も発症しないかと心配です。膀胱炎の漢方処方はどんなものでしょうか。 (42歳・女性)
A 膀胱炎は、大腸菌などの腸内細菌が尿道に侵入し、繁殖して頻尿や排尿痛を起こす病気で、放っておくと血尿が出たり、さらに細菌が腎盂(う)にまでさかのぼると腎盂腎炎を引き起こします。軽くみてはいけませんね。
冬に患うことが多く、特に女性に多いのは、尿道が短いことが大きな理由ですが、女性は冷え性の人も多く、冷えが膀胱の抵抗力を弱めていることも原因の一つです。
西洋医学では、抗生物質を服用し、水分を多めに補給し、尿量を増やして膀胱を洗い、刺激物を控えて安静にします。くれぐれも下腹部を冷やさないように注意します。
たいていはこれで治るのですが、中には、膀胱炎を繰り返して抗生物質を長く服用した結果、抗生物質が効きにくい体質になる人がいます。
これは、根本原因の冷えの症状を治すことを考えなかった結果といえるでしょう。
このような患者さんは多くがやせ気味で体が丈夫でなく、漢方では「虚証」という体質に属します。虚証の人は、漢方薬がよく合うようです。
また、普段から丈夫で、体格も良い人を「実証」といい、このタイプの人は漢方薬も西洋薬もよく効く人が多いようです。
さて、膀胱炎によく使う漢方処方に猪苓湯(ちょれいとう)があります。
猪苓湯は、猪苓、茯苓、沢瀉(たくしゃ)、滑石(かっせき)、阿膠(あきょう)という5つの薬草の組み合わせでできています。
猪苓、茯苓、沢瀉、滑石には利尿作用があり、尿路の炎症を取り去ります。また、阿膠は止血作用と急迫症状を緩和する作用があります。
これらの薬草には抗生物質に匹敵する抗菌作用はありませんが、膀胱炎をはじめ、腎盂腎炎、腎石などにもよく利用される処方です。特に血尿がみられる場合は良い効果を示すことがあります。
また「傷寒論」という漢方の書物をひもとくと、「心煩して眠るを得ざる者は猪苓湯之を主る」とあり、不眠などにも利用されます。
猪苓湯のほかにも膀胱炎の漢方処方がたくさんあるので、自分の体質、症状に適するものを、専門家に相談してみてください。
今回の相談者も膀胱炎を繰り返すとのことで、食生活では、冷え性を治すために、果物や生野菜、白砂糖、冷たいものなどの摂取を避けた方が良いでしょう。
ビタミン、ミネラルなどの補給は大切ですが、季節の果物は少しにして、火を通した野菜をたくさん食べるように心掛けてみてください。