お知らせ大先生 不在のお知らせ
ホーム掲載記事リビング寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A
リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A

尿失禁で悩んでいます

Q 先日、トイレに行って下着を下ろそうとしたら、失禁をしてしまいました。こんなことが2回ほど続き、ショックを受けています。何か良い漢方はありますか。 (68歳・女性)


 これは、尿失禁の中でも、我慢がきかなくて漏れる「切迫性尿失禁」というものです。そのほか、くしゃみをしたときなどおなかに力が入ったときに漏れる「腹圧性尿失禁」、残尿感があり、常にタラタラと漏れる「溢(いつ)流性尿失禁」などがあります。

あるデータによると、60歳以上の約1割が1カ月に1回以上の尿失禁を経験し、年齢が高くなるにつれ、尿失禁が増えているとのことです。

遠出ができない、気分が沈む、不潔になるなどの悩みを持つ人も多いようです。

漢方では、尿失禁を、遺溺(いでき)とか遺尿といいます。

尿失禁もまた、漢方薬によって改善することが多い症状の一つで、江戸時代の漢方の医書をみると、覚えがなく失禁する、分かっていながら失禁する、眠ると失禁するなど、細かく症状別に記され、それぞれに有効な漢方処方が考えられています。

中でも、代表的な漢方処方の一つが、六味丸(ろくみがん)です。

地黄(じおう)、山薬(さんやく)、山茱萸(さんしゅゆ)、牡丹皮(ぼたんぴ)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)という6種類の薬草を組み合わせたものです。

たとえば、尿の勢いがなくなったり、体が衰弱して目にチラチラとゴミのようなものが気になったり(白内障などの症状)、耳鳴りがしたり聞こえにくくなったり、足腰に力が入らない…といった症状がある人の尿失禁によく使われます。

六味丸を数カ月間服用していると、徐々に失禁の回数が減少していくでしょう。

このほか、尿失禁によく使われる漢方薬といえば、八味丸(はちみがん)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などです。

ところで、六味丸は、夜間頻尿の人にも応用できます。

健康な成人の1日の尿量は1000~1500mlで、1日の排尿回数は4~6回程度です。夜間は尿分泌量が減少するので、排尿が全くないか、あっても1回程度です。つまり夜間の排尿が3回以上であれば異常といえます。

漢方では、夜間頻尿を腎虚(じんきょ)の症状と考えます。腎虚とは、腎臓、副腎、生殖器などの機能が衰えた結果として、排尿異常、腰痛、足の無力感、冷え、しびれ感、ホテリなどの症状が出ることで、老化によるところが多いものです。

ただし、脳血管障害などが背景となっていることもあり、一度は、専門の病院で診てもらうことも大切です。