Q 私は過敏性腸症候群を患っています。通勤途中など、トイレに行くことができない状況になると、強い便意を催し、とても困ります。旅行もあまりできません。漢方薬がよく効くと聞いたことがあるのですが、どんな漢方薬ですか。 (29歳・女性)
A 桂枝加芍薬湯がよく使われます
過敏性腸症候群(IBS)は、自律神経失調症の一症状です。
精神的ストレスなどによって腸の運動をつかさどる自律神経系のバランスが崩れ、腸の機能に異常が生じるというものです。ですから検査を行っても炎症や潰瘍(かいよう)などの異常は認められません。
真面目な人やストレスに弱い人に多く、20代の女性や、働き盛りの男性に多く見られ、消化器疾患の中でも最も患者の多い症状です。
症状の現れ方によって、不安定型(下痢と便秘を繰り返す)、慢性下痢型、分泌型(腹痛の後に粘液を分泌する)、ガス型(腹鳴、腹部膨満感、放屁)などに分類されます。
随伴症状として、腹部不快感や食欲不振、全身倦怠感、不眠、不安、肩こり、頭重感、腰痛など、全身にわたる自律神経失調に基づく症状も見られます。
日常生活の乱れが過敏性腸症候群を引き起こすこともあり、その場合は暴飲暴食、喫煙、アルコールの多量摂取などを避けることが肝要です。
しかし、精神性ストレスによるものであれば、心療内科を受診するとよいでしょう。もちろん、消化器内科でも診てもらえます。
また漢方薬は、過敏性腸症候群によく奏功するといえます。漢方薬の服用中は無症状となり得、服用をやめても再発しないケースが見られます。ぜひ試してもらいたいものです。
では、代表的な漢方薬を紹介します。
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
漢方の大書「傷寒論」に紹介されている薬で、過敏性腸症候群に最もよく使われる - 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
先の漢方薬に大黄が入ったもの。便秘傾向があって腹痛に強い症状に用いる - 人参湯(にんじんとう)
慢性下痢型の人に奏功しやすい - 加味逍遥散(かみしょうようさん)
漢方の書「和剤局方」にある更年期障害の薬。中年女性で、消化器症状をはじめ全身症状を訴える人に - 大建中湯(だいけんちゅうとう)
「金匱要略(きんきようりゃく)」に挙げられている薬。腹部の手術後の腹鳴、腹痛、便通異常にも奏功しやすい - 呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
体を温める薬。腸の不具合に加え、頭痛や冷えを訴える人に