漢方薬に生姜が入っているの?
Q 私は胃が弱く、今は漢方薬の補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を飲んでいます。箱に書かれている生薬の名前を見ていると、生姜と書かれていました。野菜のショウガが入っているのですか。 (31歳・女性)
A あけましておめでとうございます。年が改まると、私は常々、健康はありがたいものだと感じ入ります。今年も皆さまの健康に役立つ漢方薬の有益な話題を執筆してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
さて、新年最初のテーマは、漢方薬を構成している生薬についてです。
補中益気湯は、身体に元気をつける代表的な漢方薬。
虚弱体質で疲れやすく、胃腸の働きが弱っている人によく使われます。その成分内容は、黄耆(おうぎ)、人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、当帰(とうき)、陳皮(ちんぴ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、柴胡(さいこ)、生姜(しょうきょう)、升麻(しょうま)となっています。
この「生姜」は、私たちが普段食べているのと同じショウガを乾燥させたものです。また、蒸した後に乾燥させた生薬は「乾姜(かんきょう)」と呼びます。
生姜には健胃、食欲増進作用や、体を温める効果があります。
また補中益気湯には、「人参」が入っていますが、これは高麗人参、つまりオタネニンジンの根のことで、強壮、健胃に良いとされます。
このように漢方薬には身近な食品が使われていることが多いものです。
例えば、おせち料理に入っている栗きんとんを鮮やかな黄色に着色するクチナシの実は、漢方では「山梔子(さんしし)」といい、解熱作用や鎮静作用があります。
香辛料となるシナモンも漢方の世界では、「桂枝(けいし)」と呼ばれ、生薬として扱われます。
その正体は、クスノキ科に属する木の皮で、ご年配の方にはお菓子の「ニッケ」と同じものだといえば分かりやすいでしょうか。解熱、鎮痛、健胃の作用があり、大変よく使われる生薬です。
また、食用油や着色料に用いられる「紅花(こうか)」は、瘀血(おけつ=古い血)を取り除く生薬となります。
甘味料として使われる甘草の根もまた、補中益気湯の構成生薬の一つで、主成分のグリチルリチンは、肝臓の西洋薬としても使われます。
そのほか、シソ、チョウジ、ハッカ、サンショウ、ユリネ、クズなども生薬になるのです。
これら一つひとつは、穏やかな作用ですが、合理的に組み合わさって漢方薬になると、強い効果を発揮します。
中国で2000年以上前に端を発し、日本に伝えられてさらに独自の発展を遂げてきた漢方薬の効果は、決してあなどれるものではありません。