ホーム掲載記事リビング寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A
リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A

声がかれてきました

Q 保育士として働いています。毎日四六時中、大きな声で子供たちと接しているので、だんだんと声がかれてきました。仕事上、黙っているわけにもいかず、困っています。どうしたらよいでしょうか。 (24歳・女性)


 しわがれた声を、医学的には嗄声(させい)と言います。

一口に嗄声と言ってもいろいろなタイプに分類できます。

まず「失声」。これは声帯が振動していない、ささやき声のようなものです。
次に「そぞう性嗄声」。いわゆるガラガラ声です。
それから「気息性嗄声」。声門の閉鎖が不完全なために起こる息漏れの状態です。

実際にはこれらが組み合わさった症状がよく見られます。

嗄声の原因にもいろいろとあり、風邪やインフルエンザ、声の出しすぎ、喫煙、飲酒などが引き起こす急性喉頭炎、慢性喉頭炎、声帯結節、声帯ポリープ、ポリープ様声帯などが挙げられます。

また、声帯の筋肉を支配する反回神経の麻痺、喉頭がんなどによっても生じます。

よく夜の仕事で、声がしわがれている女性を見かけますが、お酒を飲むと血管が拡張して粘膜下で内出血が起こり、ポリープもできやすくなるのです。お酒を飲みながら大声を出したり、カラオケを歌ったり、タバコを吸うのは、美声のためにはよくありません。

対処法としては、まず声を出すのをやめて安静にすることですが、仕事で声を出す人にはなかなか難しいことです。

喫煙、飲酒などの生活習慣をあらためること。うがいやマスクの着用も、のどの乾燥を防ぎ、効果的です。消炎薬や局所吸入治療などの薬物療法もあります。

また、場合によっては、放射線治療や手術を行う必要があります。

漢方では、がんなどの場合を除けば、嗄声の原因が喉頭炎であっても、ポリープであっても、区別せずに処方します。

最もよく用いるのが、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)と麦門冬湯(ばくもんどうとう)。漢方薬と西洋医学の治療を併用することも賢明です。

それでは具体的処方をいくつかみていきましょう。

  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
    気の滞りを改善し、気分を明るくする作用がある。胃腸が弱く、体力は中程度で、咽喉に異物感があり、脈は弱い人に用いる
  • 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
    老人や虚弱者が上気道炎や肺炎を起こしている場合や、発作性、連続性のせきが頻発、顔面が好調している人に用いる
  • 清肺湯(せいはいとう)
    慢性のせき、たん、のぼせ、たんがきれるまで激しく咳き込み、いらいらしている人に用いる

まずは2週間ほど試してみてください。体質、症状が合えば、効果が現れ始めるはずです。