身近な植物で藥効のあるものは?
Q いつもコラムを楽しみに拝読しています。漢方薬を構成する生薬には、あまり耳慣れない難しい名前のものがたくさんあります。一方で、私たちの身近な場所にも健康に役立つ植物があると思うのですが、使い方などを教えてください。 (63歳・女性)
A 漢方では、さまざまな生薬を組み合わせて、薬として使います。
例えば、桂枝湯(けいしとう)という漢方薬は、桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)の5種類を組み合わせます。これは、比較的体力の弱い人の風邪の初期に用います。
この桂枝湯に、葛根(かっこん)と麻黄(まおう)を加えれば、有名な漢方薬である葛根湯になります。これは十分体力のある人に用います。
このように、生薬を加えたり、あるいは減じたりすることで、違う薬となり、効き方がまったく異なってくるところが漢方の面白いところです。
お尋ねの、身近な場所に生えている有用な植物というと、皮膚疾患に良いとされるハトムギ、胃腸病や腎臓病などに用いられるビワ、蓄膿症や中耳炎、便秘などの症状に奏功するドクダミ、尿道炎や結石、化膿、歯痛にも使われるのがカキドウシ…と挙げればきりがないほど、たくさんあります。
これらはすべて、1種類の植物だけで利用するもの。漢方薬のように複数を組み合わせることはありません。その点が、民間薬と漢方薬の大きな違いです。
この時期、道端や山すそなどで必ずといっていいほど見るヨモギの使い方についてお話ししましょう。
春から初夏にかけてヨモギは見られ、ハイキングなどで虫にさされたときは、ヨモギの葉を貼り付けて生の葉の汁で炎症を鎮めます。
6月から7月ごろになると、ヨモギはある程度成長してきます。このころの葉を採集し、乾燥させておくと何かと便利です。
腰痛や痔の場合には200~300gの大量のヨモギをお風呂の入浴剤として使います。
冷え症などの改善には20~30g程度を毎日利用するとよいでしょう。
ヨモギ酒を作るには、50gほどのヨモギをホワイトリカー1.8Lに浸けておきます。好みによって砂糖50gを加え、3カ月以上たってから飲みます。1日30㏄くらいずつ続けて飲むと、胃腸の働きをよくし、食欲を増進してくれます。
乾燥した葉をうすでつき、ふるいにかけると柔らかな綿毛ができます。これがモグサです。奈良、大和、近江地方は昔からモグサの産地として有名。現在も灸(きゅう)に使われています。
身近なところで見られるヨモギの効能を、ぜひお試しになって体感してみてください。