前立腺肥大症と言われました
Q 夜間のトイレが頻繁になり、病院で診てもらうと前立腺肥大症だといわれました。現在、病院で処方された薬を飲んでいます。知人からは漢方薬を薦められたのですが…。 (68歳・男性)
A 前立腺肥大症は、日本人男性に確実に増えており、私の薬局でも相談に来られる方が非常に多い症状です。
そもそも前立腺とは、膀胱(ぼうこう)のすぐ下側にあり、尿道をとりまく形で存在するクルミ大ほどの生殖器官です。前立腺が肥大化することで尿道が圧迫され、夜間頻尿、下腹部の不快感、排尿困難、残尿、ひどくなると尿閉や腎不全に陥ることもあります。
前立腺肥大症が出始めるのは40代くらいから。治療を開始する人が多いのは65歳くらいといわれています。
年をとると生殖の必要がないことから、前立腺は萎縮するか肥大するかの経過をたどります。少し前までの日本人男性は萎縮するケースのほうが多かったのですが、食事の欧米化のためか、肥大するケースが増えたというわけです。
治療は、西洋医学においては、手術や薬物療法が行われます。
一方、漢方では、前立腺肥大症のほか、膀胱頸(けい)部硬化症、尿道狭窄(さく)、神経因性膀胱、前立腺がんなどの排尿障害全般を「小便自利」(排尿回数、尿量の多いもの)と、「小便不利」(排尿回数、尿量の少ないもの)に大別して考えます。
漢方の大書「金匱要略(きんきょうようりゃく)」によると、「小便不利、小便自利、尿するを得ずという排尿困難の場合、そのいずれにも八味丸(はちみがん)がよい」とあり、前立腺肥大症でも最もよく利用されている漢方薬です。
八味丸は、腎気丸、八味地黄丸(はちみじおうがん)などともいわれ、地黄、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、桂枝(けいし)、附子(ぶし)という薬草からできています。
これは、足腰が弱く、冷えや腰痛などのある、体力の衰えた人で、夜間に何度もトイレに行ったり、尿が出にくいという人に試してほしいと思います。
また、同じく「金匱要略」では、猪苓湯(ちょれいとう)という漢方薬についても排尿異常の薬として挙げられていて、「脈浮、発熱し、渇して水を飲まんと欲し、小便利せざるものは、猪苓湯を」とあります。
そのほかに用いられる漢方薬としては、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、六味丸(ろくみがん)、五淋散(ごりんさん)、桂枝茯苓丸など。
基本的には西洋医学の薬と併用可能です。専門家に相談をしながら服用してください。