冷える時季に活躍する漢方薬
冷えによる不調に使われる「五積散」
冷え症のほか胃腸炎や腰痛、月経痛など応用範囲の広い薬
ぐっと冷え込む日が増えてきました。
食べ物の毒に中(あた)る「食中毒」や、暑さに中る「熱中症」などのように、寒冷にあてられることを漢方では「中寒(ちゅうかん)」といいます。
中寒による不調に使われる漢方薬の一つに五積散(ごしゃくさん)があります。
五積散は、中国・宋の時代の書「太平惠民和剤局方(たいへいけいみんわざいきょくほう)」に載る薬で、「体の中を整え、気を巡らし、冷えを除き、体内の余分な水分をなくす」という効果が書かれています。
「五積」とは血(血の滞り)、気(気の滞り)、痰(水分の滞り)、寒(寒冷)、食(食物の滞り)の5つの停滞のことを指します。それらを改善し、五積が要因で起こる諸病に応用されてきました。
五積の一つである寒積の改善では、冬に用いられることが多い薬ですが、冬だけに使われるわけではありません。
今は家電が普及しており、一年を通じて冷えの影響を受けることが増えているようです。
冷蔵庫や冷凍庫で冷えたものを飲食したり、冷房による冷えが影響したりして悪化するようなケースにも用いられます。最近では五積散は「冷房病」の薬としても知られているようです。
五積散は、あまり体力がなく、貧血気味、上半身に熱感があり下半身が冷えるような人に適する薬です。寒冷および湿気によって悪化する諸症状によく用いられ、冷え症や、冷えて悪化するような胃腸炎、神経痛、腰痛、月経痛や月経不順などに使われてきました。
薬味も17種類と多く、いろいろな漢方薬を混ぜ合わせたような構成になっており、江戸時代の書「方彙口訣(ほういくけつ)」には、「五積散は桂枝湯(けいしとう)、麻黄湯(まおうとう)、二陳湯(にちんとう)、平胃散(へいいさん)、四物湯(しもつとう)という5つの漢方薬を合わせた薬なので、上手に使えば応用範囲が広い」と書かれています。
そのためか、「神経痛の改善を目的として五積散を服用していたら、冷えやすかったおなかも不調が起こりにくくなった」などのように、複数の不調を一緒に改善してしまうこともあります。
漢方薬を服用した時の効果の現れ方は人によって異なるため、しっかり観察してみるとよいでしょう。
五積散以外にも中寒を改善する薬は多くあり、冷える部位も薬を選ぶ目標になります。体質や症状によって適する薬は異なりますので、専門家に相談して上手に利用しましょう。