適する漢方薬でなければ痩せないばかりか不都合な症状があっても当たり前、
ＳＮＳの情報に振り回されないこと

最近、「ダイエットに効果がある漢方薬はありますか」という質問をいただく機会が増えました。
何も努力しないで、ただ漢方薬を飲むだけで痩せることができればうれしいですよね。

ダイエットという名目で販売されている漢方薬では、防風通聖散（ぼうふうつうしょうさん）、防已黄耆湯（ぼういおうぎとう）、大柴胡湯（だいさいことう）などが有名です。

これらの薬を飲んで実際に痩せた人もいます。

しかし、誰が飲んでも痩せられるわけではありません。適する薬でなければ痩せられないばかりか、不都合な症状が出てしまうこともあります。

実際に、寿元堂薬局にダイエットで相談に来られた人の中には「防風通聖散を試したけれど、下痢の副作用で断念した」という人が多くいます。

しかし、それを「副作用」と呼んでよいのか疑問が残るところです。

というのも、防風通聖散は高血圧、動脈硬化症、皮膚病などに用いられる薬で、体力があり、便秘傾向で太鼓腹のような状態の人に適する薬です。

防風通聖散には大黄（だいおう）と芒消（ぼうしょう）が含まれ、両者とも便通を促進する下剤としての作用があります。そのため、便秘傾向の人以外には注意して用いなければなりません。
もともとお通じに問題がない人が、防風通聖散を飲んで軟便になるのは当然の反応です。

体質などを考慮せず「痩せる」という文言だけで薬を選んでしまって起こる不都合は副作用とは言えないでしょう。

どの漢方薬も悪い薬ではありません。

適切な薬を選べば、むくみで太っているように見える場合や、月経前などの異常な食欲で太ってしまう場合などでも、体がととのい痩せることも期待できるかもしれません。
しかし、自分に適する漢方薬を選ぶのは、意外に難しいものです。

過剰に怖がる必要はありませんが、漢方薬も医薬品であることを今一度思い出して適切に使用していただきたいものです。
「漢方薬だから安心・安全」と安易に飛びつかず、専門家に相談しながら上手に漢方薬を利用しましょう。

最近はＳＮＳやマスメディアで「ダイエットには◯◯」などと情報が一人歩きしてしまい、体質などを考慮せずに薬や食品を試してしまった結果、不都合な症状が起きてしまうケースが増えているように思います。

つい先日も、インターネットを通じて流通した食品で健康被害が出たばかり。あふれる健康情報に振り回されないようにしたいものです。