五月病と漢方薬
適応障害も、症状と体質に合わせた漢方薬で改善
適切な処方は専門家に相談を
今年は新型コロナウイルスが流行して以来、初めての外出自粛要請がないゴールデンウイークでしたが、楽しく過ごされたでしょうか。
さて、ゴールデンウイークが過ぎたころに五月病の相談が出てきます。
五月病とは、4月から環境の変化があった人が、新しい環境に上手に適応できず、なんとなく体調が悪い、やる気が出なくて憂うつ、学校や会社に行きたくないなどの不調を感じることをいいます。
五月病は正式な病名ではありませんが、診断名をつけるとすれば適応障害となることが多いようです。2018年に行われた民間のアンケート調査では、約4人に1人が五月病を経験しているとのこと。誰にでも起こりうる症状なのでしょう。
現れる症状は、漠然とした不安感、焦燥感などの精神症状をはじめ、不眠や食欲不振、倦怠(けんたい)感、腹痛などの身体症状など、多岐にわたります。
女性だと月経周期が乱れてしまうこともあります。
このようなさまざまな症状がある適応障害に対しても、漢方では、個々の症状、体質や背景などを考慮して適する処方を選んでいきます。
比較的体力がある人でのぼせ傾向があり焦燥感を感じる場合は、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などが用いられます。
緊張が強く、イライラするような場合は、抑肝散(よくかんさん)、不安や動悸(き)があり、便秘傾向で体力がある場合は、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)が適することが多いようです。
また、不眠症気味で緊張の多い人には、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)を、更年期障害でホルモンバランスが乱れている時のうつ状態には、加味逍遥散(かみしょうようさん)がよいかもしれません。
さらに、全身倦怠感を感じたり、意欲が湧かなかったりする時には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などが用いられます。
ほかにも多くの種類の漢方薬があるため、専門家に相談しながら適切に試しましょう。
また、真面目で責任感が強く、きちょうめんなど、元々の性格も関係するため、改善するまでに根気が必要なことがあります。焦りすぎないように、注意が必要です。
適応障害の多くは、ストレスから解放されると症状が改善していきます。
しかし、長引いて悪化すると、うつ病に移行することもあるため、心と体を適度に休ませ、早めの対応が大切だと思います。