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〝風邪の漢方薬は葛根湯〟という思い込みは禁物
その時の体質と症状に合わせた薬選びが必要


〝風邪に葛根湯〟と言われるように、漢方の風邪薬は葛根湯と思われることが多いようです。

葛根湯は、西暦210年頃の中国の書「傷寒論(しょうかんろん)」に載る処方で、葛根(かっこん)・麻黄(まおう)・桂皮(けいひ)・芍薬(しゃくやく)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう)の7種の生薬の組み合わせです。

傷寒論は、急性の発熱性の病気についての治療書ですので、葛根湯は風邪だけでなく、インフルエンザやコロナなどにも使う機会がある薬です。

傷寒論には「急性熱病の初期の頃に、首筋や背中が強く凝り、目に見えるような汗が出ておらず、寒気がある状態に使えばよい」とされており、このような時に下痢する場合にも使われます。

又、中国の明の時代の書「医学正伝(いがくせいでん)」には、前述の症状で、身体が痛む状態を治すとあります。

古典では、煎じ薬の葛根湯に温服とか熱服の指示があり、温かいか熱い液を飲むようになっています。顆粒剤や錠剤の葛根湯を飲むときにもお湯で飲むとよいでしょう。発汗作用を助けて治りやすくなります。

本来は急性熱病の治療に用いられた葛根湯ですが、現在では熱病のほか、肩こりや四十肩、鼻炎、中耳炎などに幅広く応用されます。
病名で薬を選ぶことなく、体質や症状等を踏まえて適切に使うことが大切です。

今、顆粒剤や錠剤などの葛根湯を手軽に利用している人は多いようですが、不都合な作用が出る場合もあるようです。

例えば、胃に負担がかかる、体がだるくなるなどの事例を時々見聞きしますが、これらは葛根湯の〝副作用〟ではありません。どちらも葛根湯が適さない状態で飲んだ場合に出る〝不都合な症状〟症状です。

先日のコラムでお伝えしたように、顆粒剤や錠剤などは、煎じ薬よりも効果が弱いもの。なのに顆粒剤を飲んで悪い症状が出るとは、よほど葛根湯が適さない状態なのでしょう。

〝風邪の漢方薬は葛根湯〟という思い込みが浸透しているので、全身の状態に適する漢方薬を探すことを思いつかない人が多いと感じています。

さて、過去に顆粒剤の葛根湯を肩凝りに常用して重宝していた人が、葛根湯の煎じ薬を飲んだところ、汗が大量に出て困ったとのこと。この過度の発汗は、葛根湯が適する状態より虚弱な人が飲んだときに効き過ぎて出る症状で脱汗といい、体を弱らせます。

病名で薬を選ぶことなく、その時の体質や症状等を踏まえて適切に使うことが大切なのです。