人参養栄湯はフレイルの状態に適することが多い漢方薬
認知症に対しても漢方薬は試してみる価値あり
2025年には人口の約5人に1人が75歳以上の後期高齢者、65歳以上の高齢者は約3人に1人という超高齢社会になるといわれている日本。
2014年に日本老年医学会は、加齢により筋力や活動が低下している虚弱な状態を「フレイル」と定義し、その言葉が知られるようになりました。
フレイルは、健康な状態と要介護状態の中間の段階を意味しますが、身体的、精神心理的、社会的の大きく3つの要因に分類されます。
具体的には、「身体的フレイル」は筋力低下などで起きるもの、「精神・心理的フレイル」は認知機能の低下やうつから起きるもの、「社会的なフレイル」は家族や友人と交流が減少するなどして社会とのつながりが希薄になることから生じるとされています。
最近、このフレイルという状態に人参養栄湯(にんじんようえいとう)という漢方薬が使われることが増えているようです。
人参養栄湯は慢性的に体力が低下している人の食欲不振、不眠や健忘、貧血などの症状によく使われます。フレイルの状態の人に適することも多いですが、大病後や産後などの体力が低下した時などにも用いられる、応用範囲が広い薬です。
ただし、人参養栄湯だけがフレイルに用いられるわけではなく、ほかにもさまざまな漢方薬が選用されます。
加齢による変化は、腰痛や頻尿、難聴などの肉体的な症状が主ですが、個々で症状は異なります。体質や症状に合わせて漢方薬を選ぶようにしましょう。
さて、フレイルは認知症の悪化と関係性があるとされています。
フレイルになると、認知機能が低下しやすく、認知症を発症するリスクが高くなってしまうのです。認知機能の低下は、筋力や日常生活での活動量が低下し、フレイル状態を招きやすくなるといった悪循環に陥ってしまうことが多いようです。
西洋医学でも認知症の薬はあります。しかし、症状の進行を遅らせるものであって、根本的な治療薬ではありません。
漢方薬を服用した場合でも完全に進行を止めるのは難しいですが、認知症は漢方薬を試してみてほしい症状の一つです。
認知症の相談に来られた70代の女性。煎じ薬を飲み出して、3カ月ぶりに会ったお孫さんが「おばあちゃん、認知症だったんじゃないの?」と、驚いたとのこと。印象的なケースです。
年齢を重ねても元気に社会生活を送ることに漢方薬が役に立つなら、こんなにうれしいことはありません。