腸の不調に用いられる漢方薬
腹部の不快感、腹痛、下痢などの悩みがあれば、漢方薬を
試す価値あり、多くの選択肢があるため専門家に相談を
「食欲の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」「芸術の秋」。
秋は実りの季節であり、過ごしやすい気候であることから、いろいろな行動をするのに適している季節とされています。
とはいえ、最近は朝晩が冷え込む日が増えており、1日の中の寒暖差が負担になりやすい時季でもあります。おなかを冷やすことによって調子を崩して相談に来られる人が増えています。
イベントが多く、外出の機会が多いこの季節、できるだけ不調がない状態で外に出かけたいもの。特に排せつに関する不安で行動を制限されてしまうことは、できれば避けたいものです。
腹部の不快感、腹痛、下痢など、腸の調子が悪いと外出することがおっくうになってしまいます。外出先でもトイレの場所を把握したり、おなかに負担が少ない食べ物を考えて選んだり、気にすることが多くあるのです。普段から調子を崩しやすい人であれば、一層負担が大きいことは想像に難くありません。
西洋医学の薬で対応することも選択肢の1つですが、根本的に不調を改善していくには漢方薬を試してみてもよいでしょう。
漢方薬で胃腸の調子を調えてしまうには根気が必要な場合が少なくありませんが、試してみる価値はあります。
今回は腸の不調によく用いられる漢方薬をいくつか紹介しましょう。
理中湯(りちゅうとう)は人参湯(にんじんとう)とも呼ばれ、漢方を学ぶ時に誰もが通る中国・後漢時代の医学書「傷寒論(しょうかんろん)」「金匱要略(きんきようりゃく)」に出てくる有名な薬で、虚弱な人の冷えからくる胃腸の不調を改善します。ショウガを1度蒸して乾燥させた乾
姜(かんきょう)という生薬を含みます。
また、真武湯(しんぶとう)という漢方薬も、虚弱な人の冷えからくる胃腸の不調によく用いられます。「傷寒論(しょうかんろん)」に載る薬で、中国の四神(しじん)が由来である玄武湯(げ
んぶとう)という別名で呼ばれることもあります。ただし、真武湯は温める作用が強いため、他の薬以上に適する人が限られます。
漢方薬は、同病異治(どうびょういぢ)といって、一つの病気や症状に対して、体質や症状によって複数の選択肢があるのが特徴です。
そのため、どの病気や症状にも多くの選択肢があり、腸の不調も例外ではありません。
どのような時に症状が出やすいのかや体質などを観察し、専門家に相談しながら、適切に漢方薬を利用することが求められます。