漢方薬で元気を補い、体調を整えると、
その人の暦年齢より過度に老いた状態を改善できる場合があります
ご存じのように、日本では急速に高齢化が進んでいます。
内閣府の高齢社会白書によると、令和6年には、65歳以上の高齢者が総人口の29・3%、75歳以上の後期高齢者が16・8%にもなっており、世界でも有数の超高齢社会になっています。
しかし、年齢を重ねても、老いたくはないのが人情です。昔から、長く健康でいられることは人々が願ってやまないことでした。
かの徳川家康公も老いを遠ざけるために、無比山薬円(むひさんやくえん)という薬を飲んでいたそうです。この薬は、中国の宋の時代の書『和剤局方(わざいきょくほう)』に紹介されている薬で、よく体を補います。
江戸時代に最も多く使われた処方集『古今方彙(ここんほうい)』には、身体を補う「補益」の項目に老人を取り上げています。その解説書の『方彙口訣(ほういくけつ)』には、「人間も老衰して来れば気血(心身)が衰えるもの、五臓五官(内臓の働きや視覚や聴覚などの感覚)も疲れ弱まるものなれば、それだけの損分不足となる故に、補益すべきことぞ」とあります。
老いて不都合な状態になれば、若いときの体調に戻りたくなることがあるでしょうが、残念ながら、若返りの薬があるわけではありません。
さて、漢方専門薬局では、さまざまな人との出会いがあります。
その中には高齢の人もいるわけですが、暦の年齢よりも肉体の年齢が進んでいる人、つまり〝老い〟が必要以上に進んでいる人が意外と多いことに気が付きます。
そして、そのような人の訴えを改善するための漢方薬を続けて飲んだ人の中に、症状が改善するとともに、まるで少し若返ったように元気な状態になる人がいるのです。
高齢者ではないのですが、閉経した女性の体調が改善していくとともに、月経が復活したこともあります。
このことから、漢方薬は病気を治すことだけでなく、元気を補い、体調を整えて、その人の暦年齢よりも〝過度に老いた状態〟を改善する場合があることが分かります。
このような変化に気付かれる人は少なくありませんが、年齢が若い人よりも高齢の人の方が分かりやすい傾向にあるようです。
残念ながら、今の日本では、家康公が飲んだ薬も含む、多くの優れた漢方処方が忘れられ、使われていません。
しかし、それらの内容を考慮して工夫すると、現在の数少ない漢方処方でも、応用範囲が広がって、効果を出しやすくすることができるでしょう。