先日行われた世界フィギアスケート選手権で日本の男子選手が見事な演技を披露し、銀メダルに輝きました。その選手が望む結果にならなかったことは残念ですが、彼が気にしていたのは右足首の調子です。捻挫などは繰り返し症状が出ることが多いようです。
さて、明治時代に漢方が衰退した要因の一つに、戦場での外傷に対する応急手当が西洋医学よりも劣っていたことが挙げられます。その流れは明治時代以降ますます広がり、現代では外傷に対して漢方が思いのほか役立つことがあることは忘れ去られています。
しかし、西洋医学が重視されるようになるまで日本の医療を支えてきた漢方には、多くの外傷にも対応してきた歴史があります。そうした漢方の効果の中には、西洋医学にはない貴重なものがあるのです。
西洋医学では原因がはっきりせず長く悩まされている頸椎(けいつい)捻挫の痛み、骨折した場所や手術跡のあたりがいつまでたっても痛むなどの症状が、漢方薬の服用で改善していくことは少なくありません。
漢方では、外傷の原因を瘀血(おけつ)と考えます。血の循環が滞った状態で、内出血を想像すると分かりやすいでしょう。そのため、駆瘀血剤(くおけつざい)といわれる瘀血をさばく漢方薬が利用されます。
駆瘀血剤というと婦人科の症状に利用するものと思われがちですが、瘀血が原因のさまざまな症状に利用されます。
駆瘀血剤で一般的に外傷に利用されているものが幾つかあるのでご紹介しましょう。
腫れや痛みが激しく、比較的体力があり便秘傾向の人に利用する桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、皮下出血が広範囲にあるときや軽度の頸椎捻挫に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、腫れや痛みのほか、筋骨の疼痛(とうつう)が長引くときには「打撲を治す薬」という意味の名が付けられた治打撲一方(ちだぼくいっぽう)などが利用されています。
西洋医学の治療でなかなか改善せずに悩んでいるときは漢方の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。