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リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A

漢方薬にはエビデンスがなく、信頼できない?

Q 私は漢方薬を飲みますが、主人は「漢方薬の効果は証明されていない」といって飲みません。漢方薬には西洋薬のようなエビデンスがないのですか。 (53歳、女性)


 最近の医学ではエビデンス(根拠)が重要といわれています。医薬品のエビデンスとは、その有効性を科学的に証明できることです。

具体的には、医薬品の有効成分が効果を表わす量と作用の仕方が科学的に証明され、病気や症状の改善に対する有効性を統計的に認めることができることです。

このエビデンスは、西洋薬のように成分が単一なものについては検証することも容易でしょう。

一つの有効成分の作用の仕方を研究して薬を作り、それを同じ病気や症状の人に対して有効率が高く副作用が少ないことを計算するだけです。

また、医薬品には相互作用があります。Aという成分の薬とBという成分の薬を一緒に飲むときに、それらの働きに変化があるかどうかという問題です。さらに、C、D、E…と薬が増えていくとき、薬の成分によって思わぬ作用が出ることがあります。それぞれの成分が影響し合って、ある成分の作用が弱くなったり強くなったり、有害な作用が起こることさえあります。

このように、単純な成分の西洋薬でさえ、複数の薬の相互作用は複雑です。

さて、漢方薬のエビデンスですが、漢方薬は薬草(生薬=しょうやく)を何種類も混ぜ合わせて作られます。

たった一つの生薬にも多くの成分が含まれますが、生薬を何種類も組み合わせて、それらの成分の相互作用の結果として表れる漢方薬の効果は極めて複雑です。

その上、漢方薬は西洋薬とは使い方が大きく異なります。

西洋薬と違って、漢方薬は同じ病気や症状の人に共通する薬を使うことを前提としませ ん。症状の出方の違いや体質などを含めて、その人のその時の状態に適する薬を選ぶのです。

例えば、風邪に葛根湯などといわれますが、葛根湯は肩凝りや頭痛があり、汗が出なくて、寒気がしたり発熱したりして、食欲が落ちていない状態に使われます。

しかし、葛根湯が適する典型的な症状の人は意外と少なく、何種類もの漢方薬の中から適する薬を選ぶのはかなり厄介なことなのです。

漢方薬は、全ての病気や症状についてこのような使い分けをするので、ある病気や症状という枠組みに対して、一つの漢方薬の有効率さえ探ることができないのです。

数千年の歴史が証明する漢方薬の有効性をエビデンスという形で検証するには、困難で長い時間が必要でしょう。

さて、34年にわたって継続した「漢方Q&A」も今回が最終です。長年ご愛読いただきありがとうございました。新媒体「さりお」では引き続き後継者が漢方のコラムを続けます。どうぞご愛読ください。