西洋の〝冷え性〟と漢方の〝冷え症〟
肌寒く、冷えが気になる季節になりました。寿元堂薬局に冷えの相談に来られる方も増えています。また、本人が冷えを自覚していない場合も少なくありません。
西洋医学では、冷えを感じるものを「冷え〝性〞」といいます。西洋医学の考えには冷えに対する明確な定義がないため、体質として冷える性分のことを指し、単なる症状として扱われてしまうことがほとんどです。
一方、漢方では「冷え〝症〞」という言葉を使います。
冷える症状を病的なものとして捉え、適した漢方薬を選ぶ上で重要な目安の一つになりま す。同じ症状でも、冷えがあるかないかで、適する薬が変わることもあるのです。
冷えといっても、全身、手や足、四肢の末端、下半身のみ、下半身は冷えるのに顔や頭は熱くなる〝冷えのぼせ〞、腰や背中が氷を当てているように冷たい、寒い季節だけ冷える、一年中冷えるなど、冷えを感じる部位や症状はさまざまです。
漢方薬は冷えを含めて多くの症状や体質を参考にして選んでいきます。
冷えによく用いられる漢方薬には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)があります。冷え症で体力があまりなく、頭痛、肩凝り、めまいなどがある人に適することが多い薬です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)という漢方薬は寒い時期によく用いられます。昔から凍傷やしもや けなどに効果をあげてきた薬です。普段から手足が冷え、夏でも靴下を履いて寝るほど冷えが強い人に適することが多くあります。
ほかにも、冷え症の改善に用いられる漢方薬は八味丸(はちみがん)や、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)など多くあり、漢方薬が効果的なことは多いものです。
漢方薬本来の効果を引き出すためには、適する漢方薬を選ぶことが大切です。
これから本格的に寒さが増してきて冬を迎えます。症状がひどくなってしまう前に専門家に相談して、自分の症状に適したものを上手に利用しましょう。