Q 年末は忘年会、お正月は新年会と、お酒を飲み過ぎて不調です。アルコールで疲れた肝臓を元気にしてくれる漢方薬を紹介してください。 (55歳、男性)
二日酔いから肝臓障害の人まで多様な薬が
A 明けましておめでとうございます。三が日にはお酒はつきもの。屠蘇(とそ)酒に口を付けただけの人から、お酒にどっぷりと浸かった人までさまざまでしょう。
花は半開(五分咲き)を看(み)、酒は微酔(びすい/ほろよい)に飲むのがよいといいますが、なかなかそうはいかないものです。
中国・後漢の時代の書「漢書(かんじょ)」には天の美禄と謳(うた)われ、この頃には、「傷寒論(しょうかんろん)」という処方集も著されており、漢方にもお酒に関わりのあるものが少なくありません。
例えば、古典には「酒ニ傷(やぶら)レバ悪心(おしん)嘔逆(おうぎゃく)シ、宿酒ヲ吐出シ
テ、昏冒(こんぼう)眩暈(げんうん)シ、頭痛破ルガ如シ」などと記されています。これは深酒をした後の悪心、嘔吐、めがくらむ、めまい、頭痛の症状などのこと。
たらふく飲んでしまって二日酔いで苦しむのは、昔の人も同じだったようです。
酒に傷(やぶ)れる「傷酒」(しょうしゅ)や酒に中(あた)る「中酒」(ちゅうしゅ)という言葉も使われます。
多くの漢方薬が飲酒による不調の改善に使われますが、現在手軽に使えるものを紹介してみましょう。
二日酔いで嘔吐、下痢し、口渇があれば五苓散(ごれいさん)が使われます。体内に溜まった余分な水分をさばいて症状を除きます。
のぼせたり、いらいらしてじっとしていられなくなったりした時には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を飲むと気分がすっきりしやすいものです。
また、二日酔いのように一時の酒害ならまだしも、酒好きの人が気になるのは内臓に対する負担。過度の飲酒を続けた結果、肝機能が弱ると、胸から脇にかけて充満感(胸脇苦満)が出ることがあります。
この症状があるときに使われるのが、柴胡が主として含まれた大柴胡湯(だいさいことう)、小柴胡湯、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)などです。胸脇苦満のある人は平素から飲み続けると肝機能の改善に役立ちます。また、小柴胡湯と五苓散を合わせて作る柴苓湯(さいれいとう)も使われます。
肝臓障害を起こして黄疸が出れば酒疸(しゅたん)といいます。酒疸には五苓散に茵蔯(いんちん)を加えた茵蔯五苓散や茵蔯蒿湯(こうとう)などが用いられます。
平素からの飲酒家が胃腸を傷めて元気をなくし、手足に力が無く、食欲もなくなり、顔色も赤くなってしまったときには補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を用いて元気を補います。
このように守備範囲が広い漢方の効果を、上手に利用したいものです。