Q 毎年夏になると疲れやすくなります。今年の夏も猛暑になりそうなので心配です。夏の暑さに弱い体質に合うよい漢方薬があるでしょうか。 (54歳、女性)
A 暑気あたりのことを、漢方では中暑(ちゅうしょ)といいます。暑さに中(あた)るという意味です。
そして暑気あたりによる夏痩せを注夏病(ちゅうかびょう)といい、「気分も何となく衰えて気難しく、一身力無く、痩せ衰えて、食も進まず、此の症が多くあることなり」というのが、「方彙口訣(ほういくけつ)」という江戸時代の書に載る説明です。
今でも、夏ばて対策によく使われる漢方薬の一つに清暑益気湯(せいしょえっきとう)があります。同じ名前の薬も幾つかありますが、現在は「医学六要(いがくりくよう)」という中国・明の時代の書に載る処方が一般的に使われます。
人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、 麦門冬(ばくもんどう)、五味子(ごみし)、陳皮(ちんぴ)、甘草(かんぞう)、黄柏(おうばく)、黄耆(おうぎ)、当帰(とうき)という生薬(しょうやく)の組み合わせです。
夏の暑さに弱い人は、暑さが厳しくなる前から飲んでおけば夏ばてを防ぐ効果があり、夏ばてしてから飲んでも回復を早めます。
清暑益気湯では追いつかないほどに弱った状態には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が適することがあります。
また、牛黄(ごおう)という薬があります。
牛の胆石を乾燥した希少なものです。高価な栄養剤や漢方製剤にも含まれていますが、そのまま粉末にして飲むと費用対効果が高く、よく元気を取り戻してくれます。
平素から胃腸が虚弱で食が細く疲れやすい人が、夏の暑さのために、さらに食欲がなくなるときには六君子湯(りっくんしとう)がよいことが多いものです。
何となく調子がよくないという程度の人は、枇杷(びわ)の葉を煎じてお茶の代わりに飲んでもよいでしょう。
本来は枇杷の葉を含む複数の生薬を組み合わせて、枇杷葉散(びわようさん)や枇杷葉湯(びわようとう)などとして暑気あたりの症状に使われました。しかし、枇杷の葉だけを煎じて飲んでも、ある程度の効果を期待することができるかも知れません。
さて暑い夏には、冷えにも注意が必要です。
「炎暑の時は納凉したり、冷たい物を食べたり、森の陰に寝たり、夜は野外に寝て、寝冷えすると云う類があるので、時は夏だけれども、体調を壊す原因は冷えだ。冷えて体調を乱すことが多いものだ。いわば十に七、八が冷えに中る」とは、方彙口訣に載る一節です。
冷房器具も氷やアイスクリームもなかった江戸時代でさえ、暑い夏に冷えで体調を乱す人が多かったのです。
くれぐれも体を冷やし過ぎないように、気を付けましょう。