Q 高齢になる母が、体が弱ってきて食が細くなり、疲れやすい様子です。高齢者を元気にしてくれる漢方薬はありますか。 (55歳・女性)
A 「元気がない」「もの忘れが激しい」「食が細くなった」「夜、トイレに何度も起きる」「疲れがなかなかとれない」…。
高齢になると、西洋医学ではとりたてて病気とはされていないような不都合な症状に悩んでいる人が多いものです。
漢方には、衰えた状態を補う〝補益〟という考え方があり、心身の衰えを補うことを目的とした〝補剤〟が数多くあります。
漢方が最も隆盛だった江戸時代の漢方薬の処方集「古今方彙」(ここんほうい)には、〝補益門〟という項目があります。年をとると心身が弱りやすいという理由から、老人の症状についても、この補益門に付記がされています。
そもそも漢方薬は、人間の生理機能を高める作用や、自然治癒力を高める作用を持っています。排尿障害などさまざまな生理機能が低下したお年寄りには、漢方はもってこいだといえます。
高齢者に適することが多い漢方薬をいくつか紹介しましょう。
- 八味丸(はちみがん) 下半身が弱く、しびれ感、腰痛、口渇、ほてりのほか、夜間の頻尿、尿漏れなど排尿異常があり、体が弱っている状態に適します。目のかすむ症状に使われることも
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 体力が落ち、衰えた人を元気にする体力増強剤。手足がだるい、言葉に元気がない、目に勢いがないなどの人に適用されます
- 鹿茸大補丸(ろくじょうたいほがん) 体力が衰えて元気のない人によく効きます。痛みなどの特別な症状はないが全体的に体力がない人や八味丸でも効かない人にも奏効します
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) 気力・体力が低下し、貧血、食欲不振などがあり、やせている状態に用いることが多い薬。続けて飲むと気力・体力が回復するとともに、認知症の症状が改善されることも
- 牛黄(ごおう) 鎮静、強心、造血作用などがあり、心臓の弱い人に適します。また疲れやすい人や活動的な人の強精・強壮剤としてよく利用されます
- 六君子湯(りっくんしとう) 平素から食が細い人で、疲れやすくて貧血気味、体が弱く、手足が冷えやすい、食べ物がすぐ胃にもたれるような人に
- 帰脾湯(きひとう) 虚弱体質で血色の悪い人の貧血や不眠症に使われる薬ですが、健忘、認知症の人にも効果を発揮します。不安な心理状態を安定させる作用も
このように、漢方は高齢者や虚弱の人の体を補うことに優れています。
上手に利用しましょう。