麻黄(まおう)という生薬(しょうやく)をご存じでしょうか。
有名な葛根湯(かっこんとう)などに配合されている生薬の一つです。この麻黄から発見され、抽出された成分がエフェドリンです。エフェドリンはぜんそくや気管支炎の薬として使われ、市販の感冒薬などにも配合されています。
また、体を非常に元気にしてくれる牛黄(ごおう)という動物生薬には、タウリンが含まれています。戦時中、タウリンの疲労回復機能に注目した旧日本軍は、タコに含まれるタウリンを求めて全国のタコの加工場からタコの煮汁を集めたといいます。このタウリンも医薬品で使われています。
このように生薬や漢方薬をヒントにして、その中に含まれる成分を科学的に抽出し、西洋薬として利用しているケースはいろいろあります。
ただし、「抽出した成分の効果」と、「その成分を含む漢方薬の効果」は、同じではありません。
世間では、「この薬草には○○という成分が入っているから、こういう効果だろう」と考える風潮があります。しかし、生薬には、医薬品として有効な成分以外に雑多な成分が含まれているので単純な比較はできません。
そして、漢方薬は複数の生薬を組み合わせたものなので、各生薬に含まれるさまざまな成分が、お互いに複雑に影響し合います。ですから、成分の効果だけで漢方薬の効果を説明することは難しいのです。