Q この4月、子どもが小学校に入学しますが、下痢をしたり、風邪をひいたりすることが多くて心配。虚弱体質の子どもに効く漢方薬はありますか。 (34歳・女性)
A 顔色が悪い、食が細い、おなかをこわしやすい、風邪をひくと長引く、少し運動すると「疲れた」という…。
漢方では、平素から虚弱な人を「虚証」、頑強な人を「実証」と分けて考えます。このような状態の子どもは典型的な虚証といえるでしょう。
検査をしても特に病名のつく病気が見つからなければ、西洋医学では治療対象になりません。こうした体質的弱さを改善していくのは漢方が得意とするところです。
ただし漢方では、子どもに限った薬はほとんどありません。
子どもに使う頻度の高い薬というのはありますが、子どもでも大人でも、そのときの症状と体質に合わせた薬を選んでいくからです。子どもの場合は体重に応じて量を加減します。
胃腸が弱いタイプで虚弱体質の子どもによく使われる薬の一つに、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)があります。まずは、この薬について少し説明しましょう。
中国の金の時代(1115~1234年)に、革新的な医学理論を展開した医家たちがいます。その中の一人、李東垣(りとうえん)先生は「もっぱら脾胃(ひい)を補い、消化機能を高めて元気をつけるのが治病の根本である」という「補中益気(ほちゅうえっき)の説」を説きました。
補中益気湯はその代表的な処方で、医の王道という意味の「医王湯」という異名がついているほど。胃腸が丈夫でなく、疲れやすい人によく使うのですが、虚弱な子どもにも使われるのです。
そのほかにもさまざまな漢方薬があります。よく使われる例を挙げておきます。
- 人参湯(にんじんとう) 手足が冷えている、疲れやすい子どもに
- 小建中湯(しょうけんちゅうとう) やせすぎ、血色がよくない、胃腸の弱い子どもに
- 六味丸(ろくみがん) 身体的な発育不良が見られるような子どもに
- 小柴胡湯(しょうさいことう) 扁桃(へんとう)炎や中耳炎を繰り返し、耳鼻咽喉科によく通う子どもに
ひと昔前の子どもは、血のめぐりがよく、活発で、体温も高いのが当たり前でしたが、食生活や環境の激変により、最近では、低体温や冷え症の子どもが増えてきました。
冷たいジュースやアイスクリームの常飲常食を避け、日ごろの食生活をご飯とみそ汁を中心とした日本の伝統的な家庭料理にすることも、子どもの健全な成長には大切だということを知っておいてください。