忘年会シーズン。二日酔いに困る
Q あまりお酒が得意ではないのですが、お酒の場の雰囲気が好きで、この季節になるとつい飲み過ぎてしまいます。二日酔いで苦しむこともしばしば。こんなときにいい漢方薬はありますか。 (33歳・男性)
A 年の瀬が近づき、街はクリスマスの買い物を楽しむカップルと、忘年会で盛り上がるサラリーマンでにぎわっています。今年最後のこのコラムは、お酒と漢方の話で締めくくりましょう。
かの貝原益軒先生は、お酒について「天の美禄」と最大級の賛辞を送り、「酒は半酔に飲めば長生の薬になる」「少し飲めば陽気を助け、血気をやわらげ、食気をめぐらし、愁いを去り、興を発して、甚だ人に益あり」と、有名な「養生訓」に書いてあります。
ただし、半酔になるまでの酒量には個人差がありますのでご注意を。
さて、お酒で困るのが二日酔い。このような状態になったときには、五苓散(ごれいさん)や黄連解毒湯(おうれんげどくとう)がよく効きます。
吐き気が激しいときには、五苓散が特にいいようです。私もひどい二日酔いのときに、五苓散を飲んで苦しさがピタッと止まったことがあります。
また、前回のコラムで紹介したように、アルコール性肝炎になったときは小柴胡湯(しょうさいことう)などが効果的です。
さらに、昔から、ひどい肝炎、肝硬変の漢方薬として、牛黄(ごおう)、熊胆(ゆうたん)が使われます。効果が期待でき、重傷の肝硬変の人に飲ませるケースがあります。
ただし高価で、産地などによる品質の差や価格の差などが大きく、必要に応じて良質のものを選ばなければいけません。偽物も多く出回っているので気を付けてください。
漢方では、疾患を治すために飲むお酒もたくさんあります。
「金匱要略(きんきようりゃく)」に記載されている紅藍花酒(ベニバナ酒)は、女性の生殖器疾患の痛みに使われます。
今も中国で作られているものでは、虎骨酒(ここつしゅ=虎骨、牛膝、木瓜などが原料で、神経痛やリューマチなどによい)や五加皮酒(ごかひしゅ=強壮、強精に用いる)などがあります。
このほか、お正月に飲むお酒としておなじみの屠蘇酒(とそしゅ)があります。
これは、中国の三国時代の名医が伝染病予防のために創製したと伝えられ、日本では平安時代から、元旦に飲むようになりました。
現在の屠蘇は、江戸時代の名医、曲直瀬道三(まなせどうさん)の処方を原型とし、白朮(びゃくじゅつ)、桔梗(ききょう)、蜀椒(しょくしょう)、防風(ぼうふう)、肉桂(にっけい)などの生薬を、大みそかから酒やみりんに浸して作ります。
「医心方」という書物にも「一人これを飲めば一家に病なく、一家これを飲めばその里に病なし」とうたわれています。