Q 事務職で、一日中座って仕事をしているのですが、ここ数年、腰痛がひどくなり、座っていることがつらくなってきました。病院へ行ったりマッサージを受けたりするものの、なかなか良くなりません。 (52歳・女性)
A 腰は、月(にくづきへん)に要(かなめ)と書くその文字通り、体にとって重要な部位です。腰に痛みや違和感を感じると、どうしても日常生活に支障をきたします。
しかし人間は、二足歩行を始めたときから、腰痛とは切っても切れない関係となり、腰痛持ちの人がいかに多いことか…。
その診断名として、変形性脊椎症、腰部椎間板症、腰部椎間板ヘルニア、骨粗しょう症、腰部脊椎間狭窄症、腰椎分離症、腰椎すべり症など、さまざまなものが挙げられます。
これらを引き起こす原因には、日ごろの姿勢の悪さ、内臓疾患が原因のもの、ストレスやうつ病など精神性のものがあります。
時に、がんやカリエスなどが原因で起こる場合もありますから、念のために病院を受診すると良いでしょう。
また、ぎっくり腰のような急性の腰痛であれば、まずは安静が大事です。
そのほかの慢性化した腰痛をお持ちの人には、漢方薬を試してみることをお薦めします。何をやっても良くならず、「もう一生治らないかも」…とあきらめかけていた人に漢方が奏功することは、まれではありません。
それでは、実際の処方の代表例をいくつか見ていきましょう。
- 五積散(ごしゃくさん)
上半身にほてりがあり、下半身が冷えるという人に。中年女性の慢性腰痛に用いることが多い - 八味地黄丸(はちみじおうがん)
初老以降の腰痛に用いることが多い。口の渇きを訴え、夜間頻尿、冷え性、便秘傾向がある人に - 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
水毒と瘀血(おけつ)がある人に。疲労しやすい、目まい、立ちくらみ、肩こり、月経不順などの不定愁訴を訴える女性の腰痛に - 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
瘀血証で、唇が暗紫色、出血しやすく、肌荒れ、腹部の膨満感がある人に - 麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)
冷えが原因の腰痛に
漢方薬は、その人の体質と症状に合ったものを選んでいれば、長期に服用したからといって、副作用を心配する必要はありません。
それどころか、かえって腰痛の軽快とともに、冷え、ほてり、のぼせ、疲れ、目まい、立ちくらみ、肩こり、食欲不振、便秘、下痢などの身体症状が快方に向かうことも少なくありません。このことは漢方の長所の一つと言えます。