Q 風邪をこじらせたのか、咳(せき)が長引いています。お風呂で温まったり、布団に入って寝ようとすると激しい咳が出て苦しんでいます。 (30歳・女性)
A 咳は、気道内に生じた分泌物や異物を排除しようとする生理的な防御反応です。鼻水が鼻の奥からのどに下りてきて咳の原因になっていることもあるので、鼻水が出ているならよくかむことが大切です。
西洋医学は、鎮咳(がい)薬、去痰(たん)薬、気管支拡張薬、吸入療法などによって治療します。
西洋医学が呼吸器のみに着目して治療しようとするのに対し、漢方は全身の症状を把握し、鎮咳去痰薬を中心にしながら、体全体を整えていくことを目指します。
漢方だけで治ることも多いのですが、抗生剤など西洋薬の併用を必要とする場合もあります。
咳や痰が出るときに使われる漢方薬の一部を紹介しましょう。
- 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう) 麻黄(まおう)、杏仁(きょうにん)、甘草(かんぞう)、石膏(せっこう)という4種の生薬(しょうやく)を組み合わせたもの。
麻黄(まおう)に含まれるエフェドリンには、気管支を拡張して咳を止める作用があります。杏仁(きょうにん)からは鎮咳去痰作用がある杏仁水という薬が作られ、エフェドリンとともに西洋医学でも利用されます。さらに、甘草(かんぞう)の成分のグリチルリチンには鎮咳作用があります。4つの構成生薬のうち、西洋医学から見ても効果のはっきりしている生薬が3つも含まれている漢方薬は珍しいといえるでしょう
- 参蘇飲(じんそいん) 胃の働きをよくする六君子湯(りっくんしとう)から白朮(びゃくじゅつ)を除いて、枳殻(きこく)、桔梗(ききょう)、木香(もっこう)、紫蘇葉(しそよう)、葛根(かっこん)、前胡(ぜんこ)を加えた内容。胃が弱くて虚弱な傾向の人に使われます
- 清肺湯(せいはいとう) 参蘇飲が体を温めて痰を乾かすという意味で使うのとは反対に、清肺湯は肺の熱を涼しくして潤す作用があります。気管支炎、気管支喘息(ぜんそく)、気管支拡張症などで、粘っこい痰が多くて切れにくく、咳が長引くときに効果的です
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう) 高齢者や虚弱な人に適する薬。主になる麦門冬という生薬は、のどをよく潤して、咳を止め、痰を出しやすくします。粘っこい痰が切れにくく、激しい咳が出て、のぼせて顔が赤くなるもの、また、のどに潤いがなく、乾燥して刺激を感じる症状などに用いられます。風邪、妊娠中の咳、気管支炎、気管支喘息、百日咳、咽頭炎、声がれ、結核など、多くの病気に使われます