Q 息子がアトピー性皮膚炎です。中学生の頃に一時期ひどくなり、就職してしばらくしてまた悪くなりました。漢方薬は効くでしょうか。 (57歳・女性)
A 一昔前までアトピー性皮膚炎は子どもの病気と思われていました。乳幼児の患者がほとんどで、成長するにつれて自然に治っていたものです。
しかし、いつの頃からか、次第に治りにくくなり、現在では大人のアトピー性皮膚炎が少なくありません。
幼い時に発症して、そのままよくならないで大人になっても症状が続いている人、いったんは治ったものの、大人になって症状が悪化した人、大人になって初めて発症したと思える人など、さまざまです。
アトピー性皮膚炎の多くは、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などアレルギーの病気を発症しやすい体質が遺伝した人に発症します。
昔は、アレルギーの病気の家族歴である程度判断できていたのですが、現在では食生活や住環境など、あらゆる生活環境が変化した影響によって、以前は隠れていた体質があぶり出されて、アトピー性皮膚炎を含めてアレルギーの病気が増えているように思えます。
さて、質問についてですが、アトピー性皮膚炎を含めて、治りにくい皮膚の病気にも漢方を試す価値はあると思います。
漢方を求めて来られる人の多くは、長い間西洋医学のお世話になっても治りにくいケースです。
中には、ステロイド剤などの西洋薬を嫌って、「漢方薬にすぐ切り替えたい」と言われる人もいます。
しかし、悪化したアトピー性皮膚炎に対応するためには、西洋薬を嫌わないで、今まで行ってきたことをそのまま続けながら漢方薬を試すとよいでしょう。
そうすれば、西洋薬と漢方薬の長所を利用でき、短所を補うことができます。また、今までそれなりに維持してきた症状を悪化させる心配がありません。そして漢方薬の効果を素直に判断できることが多いのです。
漢方薬の効果が出てくるに従って、まずは西洋薬が不要になり、最終的には漢方薬を飲まなくても症状が出なくなればよいのです。
成人の悪化したアトピー性皮膚炎を治めるには根気が必要なことが多いものです。上手に漢方薬を利用してください。
使われる機会が多い漢方薬の一部を簡単に紹介します。
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) アトピー性皮膚炎に限らず、化膿傾向のある皮膚疾患にも使用されます。
- 消風散(しょうふうさん) 分泌物が多く、かゆみが強い皮膚疾患に。
- 温清飲(うんせいいん) 皮膚が乾燥して分泌物が少なく、かゆみが強い皮膚疾患に。
- 当帰飲子(とうきいんし) 貧血傾向のある人や虚弱な人の乾燥する皮膚疾患に。