Q 風邪をこじらせてしまい、咳(せき)が長引いています。西洋医学の薬は飲んでいますが、なかなか治りません。効果的な漢方薬はありますか。 (49歳・女性)
A このところ朝晩は冷えるのに昼は汗ばむほどで寒暖の差が激しく、風邪が流行しています。風邪による咳が長引いて、なかなか治らないという人が、寿元堂薬局にもときどきやって来られます。
しかし、咳は風邪だけではありません。気管支炎、気管支拡張症、咳を伴う気管支ぜんそくなど、気管支に関連していることがあります。
また、結核菌以外の抗酸菌で引き起こされる非結核性抗酸菌症で咳が出る場合も多く、漢方薬を続けて飲むことで症状が改善され、病気も良くなる人が少なくありません。
漢方薬は風邪に限らず、さまざまなタイプの咳に効果が期待できます。今回は、咳が出るときに使われる漢方薬を一部紹介しましょう。
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう) 切れにくい痰を伴う咳が出る人に適していますが、痰が多くない人向きです。また、痰が出なくてものどに違和感のある人、夜間に咳き込む人、顔が赤くなるほど激しく咳込む状態などにも使われます。風邪、妊娠中の咳、気管支炎、気管支喘息、百日咳、咽頭炎、声がれ、結核など多くの病気に使われる処方です。
- 清肺湯(せいはいとう) 切れにくい痰(たん)が多くて咳が出る状態に…。
- 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう) 漢方の咳止めとして有名。子どもの咳止めにも使います。この薬と小青龍湯に含まれる麻黄(まおう)の成分エフェドリンには、気管支拡張作用と鎮咳作用があることが分かっています。
- 参蘇飲(じんそいん) 胃が弱い人に向いています。胃の働きをよくする六君子湯(りっくんしと う)から、白朮(びゃくじゅつ)を除いて、枳殻(きこく)、桔梗(ききょう)、木香(もっこう)、紫蘇葉(しそよう)、葛根(かっこん)、前胡(ぜんこ)を加えたもの。
- 小青竜湯(しょうせい りゅうとう) 鼻水が多く出て、くしゃみを伴う ような咳に
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) のどに何かがひっかかっているような状態を、漢方では梅核気(ばいかくき)と呼びます。この症状を気にして咳をする人があります。梅核気を改善する薬としてよく使われます。
咳の症状を改善し、咳の出る病気を治すための漢方薬はたくさんあります。
ただし、「風邪による咳だから、この薬」、「非結核性抗酸菌症だから、これ」というわけでは決してありません。
いつもお伝えしているように、漢方薬は、西洋医学の病名だけを目安に使うものではありません。体質や症状を含めて、全身の状態に適したものを選んで使えば、効果が出やすいのです。