冷えに漢方薬は効きますか
Q お風呂から出た後、テレビを見ていてすぐに布団に入らず、ぐずぐずしていると暖房していても体が冷え切ってしまい、なかなか眠れません。特に足元が冷えて、湯たんぽが手放せなくなりました。漢方薬で改善できますか。 (47歳・女性)
漢方薬は冷えを取る力が優れています
A 今年もあっという間に年末を迎えてしまいました。暮れになると「1年が早い」という話になります。年齢を重ねるにつれ、時間の経過するスピードが早くなっていく気がするのは私だけではないようです。
さて、気象庁が発表した冬の天候の予報によると、12月から2月にかけての気温は全国的に平年並みか低いとのこと。予報通り、寒い毎日が続いています。冷え症の人にはつらいことでしょう。
最近では、体の底から冷えているという人が増えているように思います。また、本当は体が冷えているのに、「冷えている」という自覚のない人もいます。
〝冷え〟が体に与える影響は大きく、持病が悪化したり、体調を崩したりすることが少なくありません。冷えで肩凝りがしたり、頭痛がしたり、膝の痛みが悪化したり、生理痛や不妊症の一因になっていることもあります。
一口に冷えと言っても、手足や体の表面が冷えている人と、体の奥が冷えている人とは異なります。また、おなかが冷える、腰が冷える、上半身はのぼせているが下半身は冷えるなど、冷え方は人それぞれです。
漢方では冷えの様子について「水の中に座っているような」「腰から下腹部にかけて風が吹き抜ける感じ」「氷を当てているように冷たい」など、細かく観察して記述してきました。
それだけ冷えを重視してきたといえます。当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、人参(にんじん)など体を温める生薬(しょうやく)を配合した漢方薬がよく使われます。
主な漢方薬を挙げてみましょう。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 冷え症で疲れやすく、貧血傾向のあるような女性に
- 当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう) しもやけの薬として有名。手足など末端が冷えていて、湯たんぽや電気毛布がないと眠れないという人
- 温経湯(うんけいとう) 冷えるのにのぼせたり、生理痛、生理不順、月経過多がある冷え症の人に
- 真武湯(しんぶとう) とことん冷えている人にはこの薬。やせ型で体力のあまりないような人、下痢や腹痛をよく起こすような人にも
- 加味逍遥散(かみしょうようさん) 逍遥散に柴胡(さいこ)や山梔子(さんしし)を加えたもの。月経不順のある冷え症の人、肩凝りや頭痛、精神不安のある場合にも
長年、漢方の仕事に携わって、冷えを改善するには漢方薬が最適と私は実感しています。