アトピーに漢方は効きますか?
Q 梅雨ごろからアトピー性皮膚炎が悪化しはじめて、痒(かゆ)くてたまりません。何年も外用薬を使っていますが、漢方薬でアトピーは改善されますか。 (30歳・女性)
A 西洋医学でなかなか効果の得られない慢性疾患でも、漢方が効果を発揮するものが少なくありません。アトピー性皮膚炎もその一つでしょう。
当薬局にもアトピーの相談に来られる方が年々増えています。つい先日も私の近著「誤解だらけの漢方薬」(岡山リビング新聞社刊)を読んだという60代の女性が来局し、「20年ほど前にアトピーになって民間療法や食事療法で完治したと思っていたのに、今年再発した」とおっしゃっていました。
江戸時代の医学書には「小児毎年夏季に至ると疥(かい)の如(ごと)き小瘡(そう)を発し、痒みが強く、夜寝かぬる者世上に多し」とあり、このような慢性皮膚炎の場合には消風散(しょうふうさん)が良いと書かれています。
中国・明の時代に発行された「外科正宗」(げかせいそう、1617年)に収載されている消風散は、現在も大変よく使われる処方なので、約400年にわたって使用されてきたことになります。
また、2000年以上前に編纂(さん)された漢方最古の処方集の中にも、今でも使われている薬が多数見られます。
長期にわたって使用され、その間副作用のあるものが淘汰(とうた)されていることを考えれば、今残っている漢方薬の有効性と安全性は高いと言っても過言ではないでしょう。
さて、消風散を使用する場合は、2、3週間、長くて1カ月ほど試して様子をみてください。痒みが弱まるようなら、そのまま気長に続けるように勧めています。
消風散は、体力が中くらいの人で、皮膚炎が慢性化していて痒みが強く、熱を伴い、じゅくじゅくした湿疹に適しています。体の中にこもった熱を発散させ、熱からくる痒みを軽減し、アトピーになりやすい体質を改善します。じんましん、水虫、あせもなどにも用いる薬です。
消風散について詳しく述べましたが、アトピー性皮膚炎イコール消風散というわけではありません。
肌が乾燥していて痒みが強い人には温清飲(うんせいいん)、同じように痒みの強い乾燥肌でも患部に熱感がなければ当帰飲子(とうきいんし)、化膿傾向のある湿疹には十味敗毒散(じゅうみはいどくさん)など、いろいろな漢方薬が用いられます。
西洋医学の外用薬なら目先の症状を抑えることができますが、漢方薬と上手に併用することで外用薬が徐々に不要になっていくはずです。治りにくい湿疹を治すためには体質の改善が大切なので気長に考えましょう。