リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A
過敏性腸症候群なのですが…
Q 頻繁に下痢と便秘を繰り返しています。前に、受診したところ、過敏性腸症候群といわれました。漢方薬を処方するケースも多いと聞きます。詳しく教えてください。 (44歳・男性)
A 過敏性腸症候群とは、大腸の運動や分泌機能の異常で起こる病気の総称です。検査をしても、がんや、かいよう、炎症などの器質的疾患が何もないのに、便秘や下痢、腹痛を起こすものです。
患者は、若い女性や、30代の男性に多く、その原因は、ストレスと考えられています。
つまり精神的不安や、過度の緊張によるものです。また、暴飲暴食や、アルコール、喫煙などによる生活の乱れが原因の場合もあります。
「通勤電車に乗っているとトイレに行きたくなり、何度か途中下車をする」「会議が始まると、おなかが急に痛くなる」などが、過敏性症候群での方からよく聞くお悩みです。
このような過敏性腸症候群をはじめとする消化器神経症に対しては、漢方薬は非常に優れた結果を得られることが多くあります。
漢方の考え方でいくと、過敏性腸症候群の人は体質が強くない、どちらかといえば弱い、「中間証」から「虚証」が多いようです。
漢方の大書「傷寒論」によると、気の病、すなわち自律神経失調により、脾胃が虚し、裏に寒のある状態、つまり消化管の機能失調状態により便通異常を来たし下痢に傾きやすくなっている状態と解説しています。
処方される代表的な漢方薬には次のようなものがあります。
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
「傷寒論」に出てくる処方で、過敏性腸症候群の中では最もよく使用される。下痢と便秘を繰り返す人に - 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
これも傷寒論に登場する処方で、便秘傾向と腹痛が強い人に - 加味逍遥散(かみしょうようさん)
女性の更年期障害の治療薬としてよく用いられる薬。消化器症状のほか、全身の不定愁訴の症状がある人に - 大建中湯(だいけんちゅうとう)
漢方の大書「金匱要略」に載っている処方。手術の後の腹痛や腹鳴、便通異常などに - 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
時に嘔吐し、下痢と腹鳴がある場合に
信頼できる専門家に相談し、まずはよく話を聞いてもらってください。精神的な安定も大切です。