冷えと病気の関係
持病がある人、女性特有の症状がある人は、冷えの影響を受けやすいもの。
冷えをよく改善する漢方は試す価値あり
昔から冷え症の相談は多いのですが、最近は漢方薬を飲んで体が温まることで、初めて自分が冷えていたことに気が付く人が少なくありません。
このような冷えを自覚していない冷え症の人が増え続けているように思います。
日常生活に不都合なことがなく、手足が冷えるなどということだけなら気にしなくてもよいかもしれません。
しかし、神経痛、リウマチ、関節炎、気管支ぜんそくなどの持病がある人や、月経痛、月経不順、月経前症候群など女性特有の症状がある人などは、冷えの影響を受けやすいものです。
実際にあったことですが、雪崩で雪に埋もれて冷えた人が関節リウマチを発症したことがあります。これは冷えの影響が分かりやすい一例です。
このような極端な冷えの影響がない場合に冷え症になる人は、持って生まれた体質に、その後の
生活環境の影響を受けて、次第に体が冷えていきます。
長年にわたるゆっくりとした変化では、冷え症が進んでいても、分かりにくい場合が多いのでしょう。
そうしているうちに、しもやけになったり、冷えることを自覚するようになったりします。
中には神経痛やリウマチなどの病気を発症した後で冷えの影響を感じる人もあり、月経不順や不妊症を改善する過程で冷えが改善することに気付く女性もいます。
冷えが強くなると、漢方でいう痼冷(これい)という症状になります。
尾張の名医、浅井貞庵の教えを長男が書き留めた『方彙口訣(ほういくけつ)』(一八六五年)という書には、「痼冷というのは、冷えが体に根づいて体の芯から冷え切った状態だ」という記載があり、「冬の寒さが厳しい時に体が冷えるのはもちろんのこと、さほど寒くない時にも体が温まることはない。おなかは冷え、時々張り、腰や膝も氷のように中からも外からも冷えてしまう。
暑い時にも薄着はできず骨までも冷えきっているという症状である」と説明しています。
また、その根本の原因は「脾胃(ひい、消化機能)の元気の不足と命門(生命力の源)の陽気が衰えることだ」として、脾胃や命門を補うことで改善すると述べており、乾姜(かんきょう)、人参、黄耆(おうぎ)、地黄(じおう)などを配合した薬が必要だとしています。
漢方は冷えをよく改善し、さまざまな不調や病気の改善にも役立ちます。
痼冷の状態に近い人も時に相談に来られますが、冷え症の強弱にかかわらず、漢方で上手に体を整えていきましょう。