Q 昨年、風邪が長引き、肺炎にかかって入院しました。今年は風邪を引かないようにと気を付けていますが、肺炎になったときも漢方薬は効果があるのでしょうか。 (59歳・女性)
A 肺炎は日本人の死因の第4位(厚生労働省の平成22年の調査)。高齢者が季節性インフルエンザや風邪をこじらせて肺炎になり、亡くなるケースはよく耳にします。
一方、肺結核は、昔は死の病と恐れられていた病気。抗生物質のおかげで治る病気になったものの、最近また増えていると言われています。咳や血痰(たん)などの症状が特徴です。
肺炎も肺結核も、まずは西洋医学が一番です。私は、肺炎や肺結核の場合、西洋医学の素晴らしさの上に、漢方の良さが上乗せされると考えています。
ですからここでは、西洋医学の主治医の先生の治療をきちんと受けることを前提とした上で、漢方薬を利用する場合について考えてみたいと思います。
肺炎や肺結核に限りませんが、体が弱ったとき、虚弱な状態のときに病気になりやすいものです。
病気になるかならないかは、病気を相手に綱引きをしているのと同じことだと私は考えています。「虚弱な状態」は、敵に塩を与えているようなものなのです。だからこそ、体力をつけ、体質を改善し、免疫力を高めることが大切です。このとき漢方薬は力を発揮します。
肺炎は一度かかると「道がつく」と言って、二度目にかかりやすくなるとも言われます。治ったからよしとせず、体質の改善も考えましょう。
では、使われる漢方薬をいくつか紹介します。
- 帰脾湯(きひとう) 虚弱で疲れやすい人に用いて心身の元気を穏やかに補う薬。疲れやすい高齢者にもよく使います
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 帰脾湯と同じく、元気を補う薬ですが、帰脾湯が適する状態よりさらに元気のない人に適しています。滋養強壮効果を持つといわれる黄耆(おうぎ)や人参(にんじん)、炎症を鎮める柴胡(さいこ)などが含まれ、長引く風邪や気管支炎にも用いられます。手術後、体力を消耗しているときにも
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう) 中国の古典「金匱要略(きんきようりゃく)」で紹介されている漢方薬。麦門冬は、のどの潤いを補い、痰を出しやすくする作用を持っています。また、空気が乾燥する季節に出る咳にもよく使われます
漢方では昔から、咳が長引くときにはこの薬、血痰が出るときにはこの薬…というように観察と試行錯誤を繰り返し、その結果、有用な処方が残ってきました。
上手に利用して体力を補っていけば、意味のある補助療法になるでしょう。