全身が原因不明の皮膚病に
Q 元々、皮膚が弱く湿疹(しっしん)が出やすい体質です。この夏は、首、胸、おなか、背中、手足の内側など、皮膚の柔らかいところに広範囲に湿疹が出て病院に行きました。治るまでしばらくかかるものの心配は要らないと言われ安心しましたが、この湿疹体質を漢方で何とかできないでしょうか。 (37歳・女性)
A 夏は皮膚病が起こりやすい季節です。体を覆う皮膚は、畳1畳分くらいの面積で、体重の約16%の重さがあり、体外の刺激から体を守っています。
皮膚に異常が生じるのは、外からの刺激による場合と、昔から「皮膚は内臓の鏡」といわれるように体内の不調が原因の場合、またその両方が組み合わさった場合があります。
一時的なものであれば西洋医学の薬で治療すればよいでしょう。ところが根治が難しいもの、再発性の高いものがあり、これらには漢方が喜ばれることが多いようです。
漢方が奏功する代表的な症状に、シミ、ニキビ、イボ、アトピー性皮膚炎、湿疹、主婦湿疹、じんましん 皮膚そう痒(よう)症、帯状疱疹(ほうしん)、乾癬(かんせん)などが挙げられます。
また、皮膚の症状に有効な漢方薬は多数あり、私が編集した「黙堂柴田良治処方集」には、96種類もの皮膚病の漢方処方を収載しています。
漢方薬は症状と体質に適するものを選んで初めて効果が表れます。特に難しい皮膚病に対処するには、慎重に薬を選ぶことが大切です。代表的な漢方薬をいくつか紹介しましょう。
温清飲(うんせいいん)
皮膚が乾燥して分泌物が少なく、かゆみが強い皮膚炎に使われる漢方薬です。アトピー性皮膚炎、皮膚そう痒症、湿疹、じんましん、ニキビ、シミのほか、アレルギー体質の改善に用いられます
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
瘀血を取り去る漢方薬として有名です。瘀血とは、血液またはホルモンなど血液成分の異常をいいます。虚弱でない、多血質で、のぼせ症の人のシミや肌荒れ、ニキビ、主婦湿疹などに処方され、月経不順、月経痛、子宮筋腫にも使われます
消風散(しょうふうさん)
分泌物が多い皮膚炎に。患部にかさぶたができ、かゆくて夜も眠れないという場合に適することが多く、頑固な湿疹やじんましん、皮膚そう痒病、アトピー性皮膚炎などに使用されます
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
世界で初めて全身麻酔による乳がん手術をしたことで有名な華岡青洲が創作した処方です。各種皮膚病の体質改善を目的としてよく使われます
当帰飲子(とうきいんし)
貧血や虚弱体質の人の乾燥性皮膚疾患に使われる薬です。特に高齢者に多い皮膚そう痒症によく効果を表します