Q 私は風邪をひいたかなと思ったら、葛根湯(かっこんとう)を飲むことにしています。ところが先日、風邪気味の夫に勧めたところ、「葛根湯で風邪が治ったことがない」と言うのです。何とか説得して葛根湯を飲ませたのですが、あまり効果がなく風邪をこじらせてしまいました。私にはよく効くのに、なぜでしょう。 (27歳・女性)
A 立冬も過ぎて、暦の上ではもう冬。風邪の季節の到来です。
風邪の漢方薬といえば、葛根湯を思い浮かべる人が多いでしょう。江戸時代には葛根湯医者の落語ができたほど有名な薬で、明治時代にも「葛根湯を風邪などの肩凝りに使うことは小さな子供でも知っている…」と専門書に書かれていました。
歴史をひも解くと、中国の後漢の時代に編さんされた処方集「傷寒論(しょうかんろん)」に葛根湯が登場します。
急性の熱病の初期段階で、寒気が強く、首や肩、背中の凝り、頭痛などの症状があり、汗が出なくて、食欲が落ちていないときに飲めばよいと記載されています。
つまりこのような症状であれば、風邪に限らず、広範囲に葛根湯は用いられます。実際に葛根湯は神経痛、リウマチ、五十肩、鼻炎、蓄膿症、湿しん、じんましんなどにも使われるのです。
また、ご質問のケースにもあるように、初期段階の風邪だからといって、誰が葛根湯を飲んでも効果が見られるというわけではありません。漢方は、その人の体質と症状に応じて使い分けるもので、葛根湯は比較的体力のある人に用います。
それでは、葛根湯のほかにどんな漢方薬があるのかを見てみましょう。
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
体力が中等度の人で、喘鳴、呼吸困難、水様の鼻汁、くしゃみを伴う場合に - 参蘇飲(じんそいん)
胃腸虚弱な人が風邪をひき、長引いた場合に。微熱、頭痛、せき、痰(たん)があり、時に悪心、嘔吐(おうと)を伴う - 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
比較的体力のある人で、せきが強く、口が渇き、熱感、呼吸困難があり、痰が粘って切れにくい場合に - 小柴胡湯(しょうさいことう)
胸が苦しく、食欲不振で、悪心、嘔吐がある場合に - 香蘇散(こうそさん)
体力がやや低下した人が、不眠、頭痛、抑うつ症状などの精神的症状、食欲不振を伴う場合に - 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
全身衰弱、無気力、倦怠、微熱、動悸、不安などを伴う場合に
このほかにも風邪に使われる漢方は数多く、その選択は専門家に相談することが賢明です。
また漢方薬には錠剤、顆粒剤などがありますが、最も効果が期待できるのは、やはり生薬を煮出して作る煎じ薬であることも覚えておくとよいでしょう。