繰り返す痔にうんざり
Q 独身時代から、痔の傾向があると感じていたのですが、妊娠・出産を経て、痔がひどくなりました。病院で薬をもらって養生すると一時的には良くなるものの、また繰り返します。痔の体質を、漢方ではどのように治すのですか。 (36歳・女性)
A 瘀血を取り去る漢方薬で再発予防
日本人の3人に1人は痔といわれています。しかし多くの人が恥ずかしがって、ひどくなるまで医者に診てもらおうとしません。
肛門科では、患者の気持ちに配慮した診察がなされていると聞きますので、ぜひ外科的手術が必要になるよりもっと早くに、受診してもらいたいものです。
ただ、治療をしても、再発性の高い痔の症状。再発予防と初期症状に、漢方はよく奏功します。
痔の中でも最も多い「痔核(イボ痔)」は、肛門に発生する静脈瘤(りゅう)の一種です。
原因は、肛門周辺の毛細血管がうっ血することで生じます。
立ちっぱなしの仕事だと肛門が心臓より下側にあるためうっ血しやすく、座りっぱなしの仕事もまたうっ血を起こします。妊娠、下痢、便秘などもうっ血を助長ます。
漢方では痔が瘀血(おけつ)によって起こると考え、駆瘀血剤となる漢方薬をよく使います。
中国最古の医療の原点「皇帝内経」にはすでに痔が記載されていて、以後、さまざまな処方が考案されました。代表的なものを紹介しましょう。
- 乙字湯(おつじとう)
体力が中程度の人で、比較的症状は激しくない人に。疼痛、出血、かゆみがある場合に - 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
瘀血を取り去る漢方薬の代表格。体力は中程度以上で、下腹部に圧痛があり、肌はやや黒みを帯びた人に - 桃核承気湯(とうかくしょうきとう)
体力が充実した人で、顔面紅潮、のぼせ、目まい、便秘などを伴う人に - 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)
体力が充実し、下腹部に緊張があり、肛門部の痛みや膨張が比較的強いときに - 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
虚弱で、顔色が黒く、皮膚もカサカサして、食欲がなく、栄養が良くない人に - 甘草湯(かんぞうとう)
痔の疼痛発作の温湿布に使う
男性に多いのですが、アルコールを取り過ぎることでも痔が悪化します。
なぜなら、アルコールによって血流が増えるのに、肛門の静脈から心臓へ血液を送り返す力は弱く、うっ血しやすいためです。香辛料の取り過ぎも肛門の粘膜を刺激し、患部を悪化させます。
つまり裏返して言えば、痔は生活習慣を改めることでもずいぶんと再発を防げるのです。入浴時は湯船に浸かって体を温めてください。運動不足、ストレスも大敵です。