夏も冷え症で困っています
Q 私は筋金入りの冷え症で、冬は携帯カイロが手放せません。ところが最近は、職場のエアコンのせいか、夏も手足が冷えるようになってきました。肩も凝って、疲れがとれません。 (29歳・女性)
A 以前、大阪の知り合いの漢方専門薬局が調べたところ、驚くことに、何かしらの病気を持つ人の92.3%(680人中628人)が冷え症でした。
さらにその628人のうち54%が ①肩凝りなどの関節疾患や神経痛 ②婦人科疾患 ③精神・自律神経疾患 のいずれかに当てはまりました。
冷え症自体は病気ではありませんが、冷え症を改善することでほかの症状まで和らぐことはよくあります。
最近は、この相談者のように夏でも冷え症を訴える人が増え、その原因には、クーラー、冷たい食べ物や飲み物のとり過ぎが挙げられます。あまり周知されていないのですが、過度なダイエット、窮屈な下着や靴の着用も、血行を悪くするため、冷えを助長します。
また、西洋医学では、ストレスによる自律神経失調、低血圧、貧血、ホルモンのアンバランスなどで冷えが起こると考えています。
一方、漢方医学では、冷え症を、気血水(きけつすい)の失調状態と解釈します。
ストレスによる自律神経の働きの乱れは、気の変調ととらえます。
また、低血圧や貧血の人によくみられる水分代謝の異常は水毒と考えます。ホルモン分泌のアンバランスは瘀血(おけつ)があるといいます。
気血水は複雑に影響しあって多様な病態をつくります。これを正常に戻そうとするのが漢方薬であり、漢方薬の種類もまた多様です。
それでは代表的な漢方薬をいくつか見てみましょう。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
手足の冷え、頭痛、目まい、耳鳴り、肩凝り、腰痛、月経の遅れ、手足のむくみが見られるときに - 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
腰から下の冷え、痛みがある場合に - 真武湯(しんぶとう)
新陳代謝が衰え、疲れやすく元気がない、腹痛、水様便などがあるときに - 五積散(ごしゃくさん)
冷えた飲食物、冷房などで寒冷にさらされて生じる冷え、腰痛、筋肉痛、関節痛に
ほかにもたくさんありますが、一般的に冷え症に最もよく使われるのは当帰芍薬散でしょう。当帰という生薬は冷え症の女性によく奏功します。
一説に「冷え症で貧血気味で子供ができなかった妻が、夫に嫌われ、実家に帰り、母親に教わって薬草を煎じて飲むと冷え症が治った。妻は当(まさ)に喜んで夫のもとに帰った」とあり、このことから当帰と名前が付いたそうです。