Q 先日、韓国料理のお店に行ったとき「最近、疲れがたまっている」と話すと、高麗人参を薦められました。どんな体質のどんな症状のときに良いのでしょうか。 (55歳・女性)
A 高麗人参は朝鮮人参ともいい、漢方では単に人参といいます。セリ科の赤い食用人参と混同されることがありますが、植物学的に両者はまったく異なっており、高麗人参(以下、人参)はウコギ科の多年草オタネニンジンの根のことです。
日本には7世紀以降に渡来し、江戸時代に入ってからは、幕府が人参の栽培に成功しました。それまではどこの国でも自生の人参を使用していたので、栽培に成功したのは、実は日本が初めてといわれています。
幕府は種苗を諸大名に分け与えて栽培を奨励し、全国各地で栽培が広がりました。
幕府が藩に種を下げ渡したことから、将軍に「御」をつけるのと同様に、種に「御」をつけて「おんたね」と呼び、それが「オタネニンジン」の名前の由来とされています。各大名は人参を熱心に栽培し、藩の財源にして、その薬効は実際以上に、あたかも万能薬のように宣伝されました。
しかし明治以降、西洋文化の流入とともに人参の栽培と消費は減少。現在では、長野、島根、福島などで栽培されています。
江戸時代の名医・香月牛山先生の「牛山方考(ぎゅうざんほうこう)」によれば、「諸元気の絶えんと欲する者を治するの妙剤なり」とあり、体力が急激に衰えた人、産後の子宮出血、吐血、血痰(たん)などの虚極の病(弱りきっている状態)に用いて元気な状態に戻す、とあります。
現代の研究では、人参には20数種類のサポニン、アミノ酸、有機酸、各種ビタミンなどの成分が含まれていることが証明され、疲労軽減の作用、ストレスに対する抵抗力を強める作用、消化吸収を高めて食欲を増進する作用などの研究が進んでいます。
疲れやすい人の疲労回復や、体の弱い人の食欲不振、冷え症、低血圧症、貧血、虚弱体質の改善に役立つといえるでしょう。特に胃弱を補う作用には目を見張るものがあります。
専門的には、漢方処方の構成生薬の一つとして使用します。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、六君子湯(りっくんしとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などに配合するのです。
一方、高血圧やのぼせ症の人、発熱のある人、元気のあり余っている人などには、高麗人参は合わないことがあり、使用する場合には注意が必要。当然のことですが、薬は〝使い方〟が非常に重要なのです。
特に漢方薬は、服用する人の体質やそのときの症状などを重視します。専門家とよく相談してから服用しましょう。