Q 6年前に非結核性抗酸菌症を患いました。病院の薬を飲んでも効果が見えず、副作用も出て困っています。知人から、漢方薬がよいと聞きましたがどうでしょうか。(68歳・女性)
A 最近増えている非結核性抗酸菌症は、結核菌の仲間の抗酸菌による感染症です。肺に感染することが多く、抗酸菌の8割以上を占めるマック菌によるものは薬が効きにくく、ゆっくりと症状が進行します。
結核菌ほど強力ではなく、人から人には感染しないのですが、進行すると、咳(せき)、血痰(たん)、倦怠感のほか、発熱、体重減少、寝汗、息切れ、胸痛などが見られます。
非結核性抗酸菌症という病名も最近のものです。今でもエックス線の検査では結核との鑑別が難しく、以前は結核に紛れていたのでしょう。
さて、漢方は西洋医学の病名で薬を選ぶのではありません。症状や体質など個人の全身状態に適した薬を飲んで効果を表します。
非結核性抗酸菌症は結核と同様、咳、痰、血痰、胸痛、呼吸困難、発熱、倦怠感などの症状があるかないかに加えて、その人の気力、体力などを参考にして、効く可能性の高い薬を選んで効果をあげます。
非結核性抗酸菌症のように治りにくい病気には、漢方本来の効果を表す煎じ薬が適すると思いますが、煎じ薬はなかなか飲みにくいものです。
入手しやすく、飲みやすい顆粒(かりゅう)や錠剤の範囲の漢方薬を簡単に説明すると、例えば「麦門冬湯( ばくもんどうとう)」があります。少量の痰が切れにくく、咳き込んで咽喉に違和感がある状態に使われます。
また「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は咳などの症状はあまりなく、気力体力ともに衰えて、疲れやすい人に適します。
これら2つの漢方薬を同時に飲むと「味麦益気湯(みばくえっきとう)」という薬に近くなり、応用範囲が広がります。
また「清肺湯(せいはいとう)」は痰が多く切れにくく、激しい咳が続き、痰が出るまで激しい咳が続くことが多いものに使われます。
「小柴胡湯(しょうさいことう)」は初期で症状があまりなく、体力はあるものの倦怠感があり、食欲がないという程度のものに用います。
「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」は、小柴胡湯の適する状態より虚弱で、血色が悪く、臍上(へその上部)の動悸(どうき)が高ぶり、疲労しやすく、息切れがあり、咳も熱もあり、盗汗(じとっとした寝汗)が出るものを目標とします。
なお、最近は養生するという生活スタイルが忘れられている感があります。治りにくい非結核性抗酸菌症もそうですが、自ら養生しようとする気のある人が稀(まれ)なことは気になります。