リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A
高齢者が元気になる漢方薬は?
Q 70歳になる母。朝になると「疲れた」「体がだるい」と言います。高齢者特有のだるさのようです。高齢者が元気になる漢方薬を教えてください。 (45歳・女性)
A 私の経験から、高齢者には漢方薬がよく効くことが多いと実感しています。虚証の人であればあるほど、効き目が分かりやすいと感じています。
漢方では、体を補って元気をつけることを〝補益〟と呼びます。そして高齢者には〝補剤〟と呼ばれるものが多く使われます。ほとんどの高齢者は、一部の例外を除いて体力が低下し、生理機能が衰えているもの。
そもそも漢方薬とは、衰えた機能を補い、回復させ、全身状態を良くして元気にするのが得意。ですから、漢方薬が高齢者によく効いても全く不思議ではないのです。
どのようなときに、どの漢方薬を使うことが多いのか一例を挙げてみましょう。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 全身の倦怠感のある人に。漢方では体を上・中・下と分けていて、中はおなかのことをいいます。補中益気湯は、漢字を見て分かるように〝おなか〟の機能を補い、元気を増す薬。〝元気のもとは胃腸から来る〟という説に基づいています。普段から胃腸が弱い人であれば、疲れがたまってバテバテ…というとき、この薬を試してみるのもいいかもしれません
- 清暑益気湯(せいしょえっきとう) 夏バテしている高齢者に。夏の蒸し暑さや暑気あたりのせいで疲れている人や下痢をしている人などに。その効果は素晴らしく、みるみるうちに回復することがあります
- 帰脾湯(きひとう) 物忘れがひどくなってきた人に。虚弱体質で血色の悪い人の貧血や不眠症に使われる薬ですが、健忘、認知症の人にも効果を発揮します。そのほか、胸騒ぎがして不安を覚える心理状態を安定させる作用もあります
- 八味丸(はちみがん)・六味丸(ろくみがん) 加齢とともに足腰が弱っている高齢者に。失禁するようになった人にも
- 抑肝散(よくかんさん) 怒気の強いタイプの認知症に。イライラしてやみくもに怒る高齢者を見かけます。このように怒りっぽいタイプの認知症の人に抑肝散はよく効きます
これらは一例であって、この症状だからこの漢方薬とは一概に言えません。あくまで参考にする程度で、専門家とよく相談してください。
体全体を整えると認知症が改善された人、認知症が改善されると体も元気になった人を目の当たりにしてきました。
心と体は一体。
高齢者の体の症状と精神の症状も連動していると思っています。