Q 結婚して4年がたちましたが、妊娠しません。一度、検査を受けたときは、特に異常はありませんでした。病院で不妊治療を受ける前に漢方薬を試したいと思っていますが、効果は期待できますか。 (34歳・女性)
A 中国明代の名医、王肯堂(おうこうどう)は、その著「女科証治準縄(じょかしょうじじゅんじょう、1602~1607年)」の中で、「求子の法は調経より先なるはなし」とあります。これは、「子どもを求めるなら女性の月経を整えるのが先決」という意味。
さらに、その先にはこう続きます。
「婦人の子なきものをみるに、その経は必ず或(あるい)は前になり、或は後れ、或は多く、或は少なく、或はまさに行(め)ぐらんとして痛をなし、或は行ぐりて後痛をなし、或は紫、或は黒、或は淡、或は凝って調わず…」。
不妊の女性は、月経が不順だったり、月経痛があったり、色も良くなかったりする、つまり妊娠のためには月経を整えることが何より大切であると説いているのです。
長年、漢方に取り組んできて、いつのころからか「本人が自覚しない月経異常」がとても多いことに気が付きました。このような人は、本人が治したいと思うような月経の不調はなく、西洋医学の検査でも異常は見つかりません。
しかし、古典の教えに従えば、まずは月経をよりよく整えることが目的になります。
経験的に言えば、漢方は女性の月経異常の改善に優れた効果を発揮します。適切な漢方薬を選択すると、月経周期や経血量・状態が整っていくケースに幾度となく出合っているからです。
ただし、漢方薬の品質が効果を大きく左右します。また、剤型(ざいけい)も重要なポイント。
漢方薬には煎(せん)じて飲む煎剤、エキスや粉末を製剤にした顆粒剤や錠剤などがありますが、女性には煎剤がお勧めです。
不妊症の相談のご夫婦に対して、まずは女性に漢方薬を飲んでもらい、さらに、夫婦そろって、男性にも漢方薬を飲んでもらうともっと妊娠する確率が高まることが多いと感じています。
女性には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遥散(かみしょうようさん) 、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、温経湯(うんけいとう) などがよく使われます。
男性の場合は、八味地黄丸(はちみじおうがん)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) などが使われます。
早いケースでは2、3カ月で妊娠することもまれではありません。一般的には1年前後、長くても2年くらいまでの期間を考えておけばよいでしょう。
なかなか妊娠しないという方は、月経を見直し、一度漢方を試してほしいものです。