中耳炎に漢方薬は有効ですか
Q 中耳炎を繰り返していて悩んでいます。手術を受けた方がいいと言われたのですが、漢方薬で改善の余地はありますか。 (50歳・女性)
漢方薬を試す価値は十分あります
A 中耳炎は、鼻やのどについたウイルスや細菌が中耳に入り込んで炎症を起こす病気。
多くは急性中耳炎ですが、慢性中耳炎、滲出(しんしゅつ)性中耳炎など治りにくいものもあります。
小さいお子さんだけでなく、相談者のように大人にも見られます。
急性の場合、抗生物質を用いてすぐに治ることが多いので、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
すぐによくなる場合は、西洋医学にお任せでいいのですが、治らなくて慢性化してしまうときや、手術を繰り返しているのに治らずに悩んでいる場合は、漢方を試す価値が十分あります。
中耳炎で私がいつも思い出すのは、昭和に外科医として活躍された緒方玄芳先生のお話。これは先生から直接聞いたエピソードです。
先生が、四十代半ばで肝炎になって入院したときのこと。同時期に患っていた中耳炎がひどく悪化し、抗生剤が必要と診断されました。しかし、抗生剤を使うと、肝臓の細胞が壊死(えし)するかもしれない、使わなければ中耳炎の炎症で髄膜炎になるかもしれない…
どちらの選択も難しいと言われ、漢方の名医・大塚敬節先生に相談に行きました。その後、ご自身でも工夫された漢方薬を飲んで良くなったそうです。
そののち、緒方先生は、本格的に漢方に取り組み、漢方を使う医師として活躍されました。
これは、難治性の中耳炎にも漢方薬が効果を発揮した一例です。
いろいろな漢方薬が使われますが、その中からいくつか紹介しましょう。
- 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう) 明治時代に森道伯(どうはく)先生が工夫して開発した処方。耳が腫れて痛むときに使います。やせ型の人、皮膚が浅黒い人に適することが多く、中耳炎のほかにも、肥厚性鼻炎、副鼻腔炎、慢性扁桃炎、ニキビなどにも使われることがあります
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) 解毒効果の高い生薬(しょうやく)を中心に構成された処方。湿疹、じんましん、化膿(かのう)性の皮膚疾患などによく使われます。中耳炎も炎症と化膿を引き起こしている状態なので、効果が期待できます
- 小柴胡湯(しょうさいことう) 急性中耳炎が慢性化してきたような場合に用いられます。風邪がこじれたときや、食欲不振、胃炎などにも
そのほか、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)などさまざまな薬が使われます。