Q 結婚して5年たちます。なかなか子宝に恵まれず、焦っています。不妊症に漢方薬がよく使われるそうですが、それはどんな薬ですか。 (36歳・女性)
A 子供を欲しいあなたが漢方に関心を持ったことは幸いです。漢方薬は、現在、さまざまな不妊治療の現場で使われ、西洋医学の医師からも注目されるほどだからです。
私の薬局でも、あるとき、結婚後11年間不妊で悩んでいる女性の妊娠・出産に成功しました。
最初5カ月間は温経湯(うんけいとう)を飲んでもらっていたのですが、妊娠しないため、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を併用してもらったところ、たちまち妊娠できたのです。
このように、漢方薬はその人の体質を見ながらの薬選びが必要です。また、そこには膨大な漢方の知識が必要で、専門性が高い、奥深い世界です。
この女性に限らず、正しい漢方薬を選べば、不妊症でお悩みの場合でも、早くて数カ月、遅くても1、2年で効果が見られることが多いものです。
なお、最近では夫婦で漢方を飲んだほうが良いケースが多くなりました。
西洋医学では、不妊症の原因をさまざまな検査で調べ、ホルモン療法や、ときには卵管手術などが行われますが、漢方の考え方はまったく異なります。
漢方薬では、不妊症の人に冷え症が多く、月経不順、月経痛を伴うことがよくあるため、冷えを取り除き、血の巡りを良くすることを目的として処方されます。
実際の処方をいくつか見てみましょう。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
「安胎の妙薬」と呼ばれるように、検査で異常がなく原因不明の不妊症に、まず投与する薬です。虚弱で、血色が優れず、冷え症、月経異常のある人に合う処方とされています。胎児の子宮内発育を良好にするので、流産、早産の防止にも服用することが多い薬です - 加味逍遥散(かみしょうようさん)
貧血気味で冷えがあり、虚弱で、頭痛、肩凝り、不眠などの不定愁訴の多い人の不妊症に用います。特に自律神経失調などの神経症状が強い場合に有効です - 四物陽(しもつとう)
比較的体力の低下した人で、手足が冷え、皮膚の栄養低下や乾燥傾向が見られる人に処方します。この薬は、不妊症、性器出血、血の道症などに広く用いられます - 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力は中程度もしくはそれ以上で、赤ら顔で筋肉は硬く、のぼせ症で暑がりの人に。瘀血を緩和する代表的な薬で、受胎しやすい状態にします
ほかにも不妊症に用いる漢方は多数あります。大事なのは、漢方に詳しい専門家を訪ねて、適確な薬を選ぶことです。