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リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A

交通事故に遭い、むちうち症に

Q 先月、車同士でぶつかるという交通事故に遭いました。その日は、たいしたケガでないと思ったのですが、2日後から首の具合がおかしくなり、頭痛がし、今も病院に通っているものの全快しません。何か良い処方はありませんか。 (42歳・女性)


 それは痛々しいですね。むちうち症は、追突事故で起こることが多く、そのときは何ともなくても、1、2日後から発症するケースがよくあります。ですから、事故に遭ったら症状はなくとも病院で受診するべきです。

事故の衝撃で、首が伸展しすぎたり、屈曲しすぎることが原因で、筋肉や靭帯の損傷、重症のものでは、頚椎(けいつい)や脊髄(せきずい)などの損傷もあります。

症状としては、首の運動障害、背中や肩の痛み、頭痛、腰痛、しびれ、目のかすみ、意識障害、排尿障害…ほか、多岐にわたります。

軽症の場合は、首を固定して安静にし、消炎剤を投与することで軽快していきます。

1カ月以上続くようなら、慢性化して治りにくくなっているとも考えられ、漢方薬の出番となります。

漢方薬がむちうち症に効くことを知らない人は多いようですが、私の経験上、高い確率で効果が期待できるものです。

処方は、症状と体質を見ながら選びます。例を挙げて説明しましょう。

背中の痛みや頭痛などがあり、体が丈夫な「実証」の人には、葛根湯(かっこんとう)を処方します。ただし、虚弱な「虚証」の人には、桂枝湯(けいしとう)、または桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を選びます。

自律神経症状が出た場合、実証の人には、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)を用います。

また、虚証の人には桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)を。実証と虚証の間の「中間証」の人には、加味逍遥散(かみしょうようさん)を処方することが一般的です。

また、中間証の人の目まいには、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を用い、冷えがでたときには当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)を。

ただし虚証で胃弱の人には人参湯(にんじんとう)、月経不順がある人には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を用います。

瘀血(おけつ)といって、血が滞った捻挫の状態なら、実証の人には桃核承気湯(とうかくしょうきとう)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を、虚証の人には当帰芍薬散をよく用います。

ここに挙げた処方はほんの一部。漢方薬の服用は、西洋医学の治療と併用できるので、一度、漢方の専門家を訪ねると良いでしょう。