Q 先日、病院に行き、妊娠していることが分かりました。初めての子供を授かり、とても喜んでいます。一方で、私の周りで風邪を引いている人が気になります。薬の胎児への影響を考えると、風邪を引いたら漢方薬にしようかと思っているのですが。 (27歳・女性)
A 急に朝晩冷え込むようになり、気温の変化についていけずに風邪を引いた人がわりといるようです。これからは、ますます風邪が流行する季節ですね。この質問者は、初めての妊娠にうれしさと戸惑いを感じていることと思います。
厚生労働省から認可を受けている薬とはいえ、服用すれば胎盤を通じて、薬の成分がおなかの赤ちゃんに届きます。やはり妊娠中は、自己判断での薬の服用は禁物。専門家の処方を受けるのがよいでしょう。
産婦人科などの病院でも、妊婦に漢方薬を処方されるケースは多いものです。
ただし、「風邪」と聞けば誰に対しても「葛根湯(かっこんとう)」を処方するという乱暴なやり方には、漢方の専門家である私は異論を唱えます。
漢方薬は、病名に対してではなく、その人の「証」(しょう=体質や症状を総合的に分析したもの)に合わせて処方すべきものだからです。
証を把握し、的確な漢方薬を処方することは、かなりの知識と経験が要求されます。正しく処方できれば、風邪もまた1、2日で治せることが多く、即効性を感じられるものです。
また、漢方薬なら何でも、胎児に影響がないかというとそうではないので、必ず専門家に相談してください。
ここでは、妊婦の風邪薬になる代表的な漢方薬を簡単に紹介します。
- 香蘇散(こうそさん)
妊娠初期の「つわり」があるころの風邪に。胃腸の調子が悪く、発熱の初期、頭重、頭痛、悪寒、悪心、おう吐、腹痛などがある場合に - 参蘇飲(じんそいん)
食欲不振、元気がなく、発熱、頭痛、せき、たん、鼻水などがある場合に。腹痛が伴うことも。香蘇散を飲む時期を少し過ぎたような風邪に - 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
肩こり、頭痛、発熱、鼻水、鼻詰まりなどがある場合に - 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
悪寒と発熱感が交互に起こり、頭痛、関節痛などがある場合に - 小柴胡湯(しょうさいことう)
風邪を患ってしばらくたった状態で、口が渇き、目まいがあり、全身が熱っぽいときに
漢方薬は、複数の生薬を組み合わせたものです。
漢方の古典に書かれた妊婦に禁忌の生薬は、牽牛子、商陸、三稜など。桃仁、大黄、附子、半夏などは慎重に用いることとされています。
いずれにしても、漢方薬もまた、長期服用は避けるべき。専門家の処方を受け、上手に利用してください。