自律神経失調症にも効果的な多くの処方がありますが、
症状と体質に応じた薬選びが必要です
自律神経や自律神経失調症という言葉はメディアでもよく使われるため、私たちの耳に入る機会も多くなりました。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、私たちの意思とは関係なく働いています。それぞれがバランスよく働くことで、呼吸や体温、心拍、代謝、消化、排せつなどの生命維持に必要なさまざまな機能の調節をしているのです。
この自律神経のバランスに何らかのきっかけで乱れが生じて、不調が出てくることがあります。
そして、検査で何ら身体的な異常がなく、他の病気の可能性がない場合に自律神経失調症と診断されます。
自律神経が乱れて起こる症状の種類は多く、不眠、胃腸の不調、倦怠(けんたい)感、動悸(どうき)、めまい、異常な発汗、頭痛、目や耳の不調、冷え、精神的な症状など、多岐にわたります。
漢方が日本の医療を支え、本来の効果を発揮していた明治時代の初期までは、諸気(精神的な要因によって起こる症状)、眩暈(めまい)、癎証(かんしょう、わずかなことを気にする症状)、驚悸(驚きやすい)、虚煩(きょはん、煩わしくさまざまな症状を覚えるもの)、不寐(ふび、不眠)、頭痛、耳病、肩背痛(肩や背中の痛み)等の漢方の症状分類の中で、現代の自律神経失調症にも効果的な多くの処方が工夫されていました。
漢方では、現代の病名だけで薬を選ぶことはありません。
また、同じような症状でも、体質によって適する薬が異なります。さらに、飲む人の環境要因などを考慮して適する薬を選ぶので、「自律神経の乱れは特定の漢方薬で対処できる」ものではありません。
現在、自律神経失調症の改善に使われる一般的な漢方薬には、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、抑肝散(よくかんさん)等があります。
これらは主に現在の医療で利用されている漢方処方の中で飲みやすい製剤(顆粒や錠剤)になったもので、漢方の歴史の中で使われてきた処方のほんの一部に過ぎません。
そして、それらの漢方薬の中から、西洋医学の病名を目安にしたり、「効能・効果」を含めて分かりやすい簡単な理屈で漢方薬を選んだりすることが多い気がします。
漢方本来の効果を期待しようとするならば、多くの漢方薬の中から自分の症状と体質に適する薬を選べるよう、専門家に詳しく相談しましょう。